「でも、その時の母が凄かったんですよ。『申し訳ありませんでした』と母の方から頭を下げ、葬儀については妻として取り仕切るしお金も出す、と。でも、4年もの間ずっと一緒に暮らしていた彼女とその息子も、私たちと同様に、いえそれ以上に父の家族だったのは間違いない。
家族として、父を共に見送ろうと言い出したんです」

子育て中だった女性は生活のすべてを美保さんの父親に頼りきりだったそうで、色んな面で途方に暮れた状態でした。そこで、
美保さんの母親は彼女を徹底的にサポート。資格の取得を勧め、自分のコネクションを使って仕事も紹介してあげたそう。子育てにも協力しており、忙しい時にはたまに男の子を預かったりしているそうです。
「母は父に対して、仕事や趣味で忙しいことを理由に無関心であったことを凄く反省していましたね。ほんと母って自分の楽しみが最優先だったから(笑)。きっと、彼女と出逢う前にも何回か浮気してたんだろうとは思いますけど、母は金銭的に問題がないなら好きにやればいいってスタンスだったから」
それにしたって、妻と愛人という立場においては珍しい関係性ではあります。
「それについて、この前改めて母に聞いてみたんですよ。とにかく最初に会った時の彼女、ほんとに父の後を追ってしまうんじゃないかってくらい弱ってて。
子どもを残して死んだり、もしくは一緒に無理心中も有り得るかもって考えたらしくて。『そんなことされちゃ夢見が悪いから』って冗談めかして言ってましたけど。母なりに、父に対するお詫びの気持ちがあったんじゃないかな……」
美保さんもクズな父親だとは思ってはいるけど、異母弟が可愛くて懐いてくれるのが嬉しいからそれでチャラだと笑っていました。クズ男が繋いだ新しい家族の形といったところでしょうか。
<文/もちづき千代子 イラスト/とあるアラ子>
もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:
@kyan__tama