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大ブレイク中の21歳俳優の“まさかの父親”。松下由樹の相手役として見せる魅力とは

野村康太の演技を見守るドキュメンタリー的ドラマ

 完全に一目惚れ、なかば恋をした吉川は、拓人をすぐにスカウトする。自分のマネジメントで必ずスターにしてみせると再起を誓うのである。冒頭場面に置かれた傷害事件は、この出会いから7か月後に起こることとして、あらかじめ視聴者に明かしてしまうドラマ構成。  事件が起きるまでに何があったのか。7か月前まで日付を遡る。このドラマ構成なら、野村康太の演技の魅力を丁寧に伝えられる。実際本作はスカウトされた拓人がほんの新米(吉川は「バブちゃん」と形容)からスター俳優にのぼりつめる過程を見せていく。  森山拓人を演じる野村は、ここ最近飛び抜けてきらめく存在感で大ブレイク中の新人俳優。スカウトされてあれよあれよという間にスター俳優になる役柄と自然と重なる。スターダムにあがった過程を遡り形式で描く本作は、まるで野村康太の演技を見守るドキュメンタリー的ドラマとして楽しめる。

作品ごとにカタチを変えられる粘土みたいな俳優

 松本まりか主演ドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系、2024年)の高校生役をブレイクの決定的布石とした野村康太は、沢村一樹の次男。  兄は、2019年に『MEN’NON-NO』誌のモデルーディションでグランプリを受賞した令和初のメンノンモデル、野村大貴である。  活動舞台を世界に定めた野村大貴は、2021年に早くも専属モデルを卒業したが、2023年には弟である野村康太がメンノンモデルデビューしている。モデルとはつまり、一瞬のきらめきを一枚の写真にパッと提供できる被写体のことである。映像を主戦場とする俳優は、瞬発力を求められながらも何カットもの動く画の中で持続していなければならない。  俳優としての野村康太は、むしろモデル的瞬発力を全面に、オーガニックな素材のように演技している。演出やカメラワークによっていくらでも柔軟に対応できる。作品ごとにカタチを変えられる粘土みたいな俳優である。 『ディアマイベイビー』は、この粘土気質の野村康太の演技が確実に成形する様子を観察できるドラマ作品だ。 <文/加賀谷健>
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