背伸びしすぎない世界観が居心地の良さにつながっている

ドトールの看板スイーツは、ミルクレープ。世界観を大きく変えずに、こだわりの味を追求している
ドトールのすごさは、メニューをみると一目瞭然です。
看板スイーツのミルクレープは、北海道産生クリームを使用することで風味豊かに改良され、クレープの極薄感やクリームとの黄金比は、他店が真似できないレベルにまで昇華されています。ミラノサンドのパンも同様で、パリッとしているのに食べるとふんわり柔らかい独特の食べ心地は唯一無二のおいしさがあります。
つまりドトールは、商品をコロコロ変えることなく、外からやってきたような新商品で勝負するわけでもなく、自分たちが生み出した商品に責任を持ちながら、それらをひとつひとつ大切に守っている。
決して背伸びをし過ぎることなく、地道に着実に努力を重ねて、さらなるおいしさを追求している。そのような姿勢こそが、多くの人にとって確かな信頼感や親近感につながっているのです。
揺るがない自信作でお客に感謝することは、一朝一夕ではできない

45周年を記念して限定販売されている「ジャーマンビッグドック」。通常のジャーマンドックよりも自慢のソーセージが45%重量アップしている
45周年を記念して、現在期間限定で販売しているのが、「ジャーマンビッグドック」。通常のジャーマンドックよりもソーセージの重量が45%アップしています。
食べてみると、改めてソーセージの濃厚な味わいや、パンのくちどけ感にも脱帽するものがあります。45という数字にかけた粋なアイデアで感謝の気持ちを伝えながらお客を喜ばせることは、商品によほどの自信がなければ実現しないことでしょう。アイスココアだけでなく、ジャーマンドックも若い世代から称賛されていることは間違いありません。
いかなる時代であっても、ブランドイメージやデジタル戦略に頼りすぎることなく、商品力(味)で勝負する姿勢こそが、幅広い年代から深く愛される基本である。そんな普遍的な商売哲学をドトールに気づかせてもらったように思います。
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>