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自分の価値観を押し付けてくる嫌なパパ友…話題ドラマの44歳俳優がそれでも「尊い」と言えるワケ

増殖するディーン・フジオカ

 詩穂と中谷はそれぞれ娘を連れて、公園の砂場で顔を合わせるようになる。子どもより熱心に砂のお城作りに励む中谷から、嫌になるくらい上から目線の高説を聞かされる。  念願のパパ友だと思ったのに! 詩穂はたまらず叫ぶ。すると画面上には、詩穂が想像する世界として、中谷の顔写真だけが貼られた選挙ポスターが出現する。「中谷達也です」と音声としてもひたすらその名前が繰り返される。  第1話ではラスト近くの初登場場面で、パソコンに向かう中谷のワンショットが挿入され、さらに詩穂の夢に登場する見下したワンショットに過ぎなかった中谷だが、第2話からやたら存在感を主張してくる。  さらに中谷役のディーン・フジオカが、選挙ポスターによって、ビジュアルとしても音声としても記号化されるかのように増殖するというのが面白い。

ローアングルで仰ぎ見る尊さ

 この増殖するディーン・フジオカのイメージは、本作だけではなく、現在公開中の映画『パリピ孔明 THE MOVIE』でも確認できる。向井理主演ドラマ『パリピ孔明』(フジテレビ系、2023年)の劇場版である同作でディーンが演じるのは、主人公・諸葛孔明(向井理)が仕える劉備である。  映画冒頭から、孔明の夢の中に劉備が何度も登場する。ドラマ版冒頭でも、孔明に話しかける劉備の姿が何カットも増殖するようにフラッシュバックする場面がある。ローアングルの画面になっている、このフラッシュバック場面で視聴者は、孔明目線で劉備を仰ぎ見る姿勢になる。 『対岸の家事』の夢の場面も中谷を捉える極端なローアングルで描かれている。つまり、夢の中、ローアングルで仰ぎ見るディーン・フジオカが共通している。  中谷は、誰がどう見てもほんと嫌な役柄だけど、ローアングルでディーン・フジオカを見せられると、孔明が劉備を愛おしそうに「我が君」と慕っていたように、半ば錯覚して尊く思えてしまう。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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