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“入社”が“ジョイン”?カタカナ語に鳥肌…テレ朝アナが40歳で転職して直面したギャップとは

貢献できている実感がなかなか得られなかった

ミーティング中の大木優紀 求められるものも大きく違いました。  意外と戸惑いを感じたのは「何かを決める」ということ。テレビ局では、番組の方針や、放送内容、そこで展開される台本に至るまで、多くの人の目を通して決定されます。「番組のアンカー」とも表現されることもあるアナウンサーは、その過程を経て、「決められたもの」を渡されることがほとんどでした。  もちろん、オンエア中の判断など、細かな意思決定はあるのですが、組織としての方向性などを決めた経験がほとんどありませんでした。だからこそ、自分が意思決定の場に立ったとき、その重さや難しさに戸惑いました。  アナウンサー時代は、感覚値や好感度が重視される世界だったのに対して、スタートアップでは、データの裏付けなどが重用されます。根拠を持って「決めること」。そして、それを周囲に理解してもらうプロセスは、大きな学びだったと思います。  さらに、新たに学んでいく必要があったのがマネジメントスキルです。  アナウンサー時代は、技術的なことを後輩に教える場面はあっても、メンバーのマネジメントをしたことがありませんでした。これは、40代ビジネスパーソンとしてはむしろ珍しいスキルの欠如でした。今も試行錯誤の繰り返しではありますが……「コミュニケーション」を心がけながら、私なりの正解を模索しているところです。  しかし、何よりも一番つらかったのが、自分が貢献できているという実感がなかなか得られなかったことでした。 「誰かの役に立ちたい」という思いが、働く原動力になっている私にとっては、この感覚を持てるまでに、思った以上に時間がかかりました。年齢を重ねているからこそ「自分が役に立てていない」という現実を痛感するのは、すごくつらかったのです。

ようやくたどり着いた「キャリアは掛け算」であるという感覚

 それでも、この3年間で数え切れない壁にぶつかりながらも、少しずつ成長している自分を実感しています。  一度ゼロリセットする覚悟で臨んだキャリアチェンジでしたが、積み重ねたアナウンサーとしての18年半の経験は、やはりしっかり自分の中に残り、役に立てることができると感じられるようになりました。  そこに、スタートアップで学んだ経営視点やPRやSNSマーケティングの知見が掛け算のように重なり合い、ようやく「私という人間が貢献できるもの」「オンリーワンの強み」というものを、少しずつ見出せるようになってきました。  まだまだ無力感を覚えることも多いですが、少しずつ、道を切り拓いている、そんな感覚を得ています。
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キャリアの正解がわからなくても、大丈夫
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