『あんぱん』母・松嶋菜々子の“叫び”以上に心を打った、“もう1人の母親”の顔が忘れられない
胸を打つシーンが多く登場する連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)ではあるが、その中でも6月6日に放送された第50回は嵩(北村匠海)の母親・登美子(松嶋菜々子)の“非国民”とまで言われた言動のインパクトは計り知れない。
第50回では、出征する嵩のために催された壮行会の様子が描かれていた。のぶ(今田美桜)の祖父・釜次(吉田鋼太郎)が「お国のために命を惜しまず、戦うてこい」と声をかけるなど、町中の人は嵩にエールを送る。
一方で、嵩の伯母・千代子(戸田菜穂)は嵩が出征することへの悲しみを抑えきれず、勇ましい声はかけられない。そんな彼女に対し、婦人会のリーダー格・餅田民江(池津祥子)は「お気持ちはわかりますけんど、そんな顔をしてはいけません」「甥御さんの晴れの日ながですき。笑顔で胸を張って『立派にご奉公してきなさい』と声を掛けてあげてください」と言葉をかける。
千代子は亡き夫・寛(竹野内豊)の写真を手に持ち、懸命に言葉を絞り出そうとする中、登美子が登場。そして、登美子は嵩に歩み寄ると「死んだらダメよ。嵩、いい? 絶対に帰ってきなさい」「逃げ回ってもいいから、卑怯だと思われてもいい。何をしてもいいから、生きて、生きて帰ってきなさい」と語気を強めた。
第49回では嵩から出征することを聞かされた際、登美子は「体力も根性もないし、忍耐力だってないし、戦場に行ったら足が震えて一歩も前に進めないでしょ?」と口にする。この物言いに嵩は「他に言うことないの?」「もういい。母さんはいつもそうだ。自分のことばっかり」とて怒りと失望をあらわにしてその場を去る。
必死に「生きて帰ってきなさい」と口にしていた登美子だが、第49回で見せたセリフは嵩を馬鹿にしたかったのではなく、「兵隊に行かないでほしい」という本心の裏返しだったのだろう。一見器用そうに、人生をのらりくらりと生きている印象だが、自分の息子にはとことん不器用な登美子。だからこそ、愛情深さを感じられ、非国民と思われようとも嵩の命を思うその姿に目頭が熱くなった。
嵩の出征に立ち会う“母親”たち
千代子は亡き夫・寛(竹野内豊)の写真を手に持ち、懸命に言葉を絞り出そうとする中、登美子が登場。そして、登美子は嵩に歩み寄ると「死んだらダメよ。嵩、いい? 絶対に帰ってきなさい」「逃げ回ってもいいから、卑怯だと思われてもいい。何をしてもいいから、生きて、生きて帰ってきなさい」と語気を強めた。
器用そうな登美子の、不器用すぎる愛情
必死に「生きて帰ってきなさい」と口にしていた登美子だが、第49回で見せたセリフは嵩を馬鹿にしたかったのではなく、「兵隊に行かないでほしい」という本心の裏返しだったのだろう。一見器用そうに、人生をのらりくらりと生きている印象だが、自分の息子にはとことん不器用な登美子。だからこそ、愛情深さを感じられ、非国民と思われようとも嵩の命を思うその姿に目頭が熱くなった。



