登美子だけではなく第50回ではもう一人の“母親”の顔が印象的だった。
「生きて帰ってきなさい」と叫ぶ登美子に対して、民江は「あなた、それでも帝国軍人の母親ですか?」「
母親なら母親らしゅう、息子さんを立派に送り出すがが、勤めではございませんか」と詰め寄る。登美子は「立派に送り出す?」「戦争に行く子に、死んできなさいと言うのが……」と反発するが、民江は間髪を入れずに「そうです」と登美子の言葉を遮った。

現代人の我々から見れば非情なことを言っていた民江だが、
この時の彼女の表情がどこか苦しそうに映った。民江は夫と息子を兵隊にとられているため、登美子の気持ちはよくわかっていたように思う。また、民江も夫と息子が出征する時、登美子のように「生きて帰ってきなさい」と言いたかったのかもしれない。それでも“帝国軍人の母親”として、大切な家族の“名誉ある死”を望むような言葉をかけたことを悔やんでいるのではないか。
登美子への同情、自身の家族に対する後悔の念、さらには
自分が言いたかったことを家族に伝えられた登美子への嫉妬心など、いろいろな感情があふれ出した結果、あの表情を浮かべていたように感じた。
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