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映画『国宝』31歳俳優の“化け物すぎる演技”に呼吸を忘れる。「約3時間の上映は長すぎ?」の不安が“必要ない”ワケ

 6月6日から公開されている映画『国宝』の勢いがすごい。  吉田修一の同名小説を映画化した本作。15歳の時に抗争の末に父親・権五郎(永瀬正敏・58)を亡くした、任侠一門に生まれた少年・立花喜久雄(吉沢亮・31/少年時代は黒川想矢・15)が主人公。その美しい容姿を見込んだ歌舞伎役者・花井半二郎(渡辺謙・65)に引き取られ、血筋も生い立ちも異なる半二郎の実子・俊介(横浜流星・28、少年時代は越山敬達・15)と切磋琢磨しながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げる姿を描いたヒューマンドラマだ。
映画『国宝』

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 6月16日に発表された13~15日の映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)では前週よりも1つ順位を上げて2位だった。こういったランキングは週を重ねるごとに順位を落としていくことが常である。にもかかわらず、ランキングを上げたことを鑑みると、内容を見た人の口コミが影響しているのだろう。SNSをはじめ、各所で好評の声がますます寄せられ、何週にもわたって上位をキープしていくかもしれない。そんな今年の話題作になりそうな本作の魅力をネタバレなしで伝えたい。

吉沢亮の“化け物”すぎる演技が心を奪う

 本作が話題を呼んでいる一番の理由はキャスト陣の演技力の高さだ。言ってしまえばストーリーそれ自体は真新しいものではない。「元ヤクザが……」という導入は珍しくないし、“才能”に恵まれた喜久雄と“血”に恵まれた俊介の対立構造がメインでストーリーが展開されるが、そのパターンも映画や漫画でよく描かれている。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 ストーリーが“ベタ”だからこそ、自然と演技に注目が集まりやすくなるが、その演技が“化け物”すぎるため絶賛せざるを得ない。特に吉沢がすさまじい。こんなことを言ってしまうと、歌舞伎役者をはじめ、歌舞伎愛好家に怒られそうだが、吉沢は本物の歌舞伎役者と思わせる演技を見せている。  また、吉沢自身が役作りのために歌舞伎と真摯に向き合ってきた姿と、歌舞伎役者として努力を重ねる喜久雄の姿がクロスオーバーして、何重にも吉沢・喜久雄が演じる姿に心を奪われた。

少年時代を演じた、黒川想矢の演技も圧巻

 吉沢にしっかりとバトンを渡した“もう1人の喜久雄役”である黒川想矢の演技も圧巻。歌舞伎の舞台を目を輝かせながら見る様子、厳しい稽古に楽しそうに取り組む姿勢など、喜久雄が少年時代にどれだけ歌舞伎に魅了されたのかを示していた。喜久雄の軌跡を描いた本作の屋台骨を見事に作り上げ、吉沢演じる喜久雄の人間像を明確にした印象である。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 ただ、吉沢や黒川だけではなく、横浜流星や、人間国宝の女形・小野川万菊を演じる田中泯(80)など、登場する歌舞伎役者は誰もが美しさを放っていた
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2時間55分、“タイパ”が悪いからこそ得られる興奮
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