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“恋愛よりも重いもの”示した『最後から二番目の恋』13年間を振り返る。2012年に出会った男女が、アラ還で交わした約束は

この年になって誰かと別れるのはもう嫌だ

 今シリーズは特に主役ふたりがアラ還とあって、仕事でも「年齢」を意識せざるを得なかったり、この先どうやって生きようかと悩んだり。それでも千明は、最終的にはいつでも未来に希望をもち、未来の自分に恋をする姿勢を変えない。  最終回、それぞれの登場人物たちはそれぞれにおさまるところにおさまり、大団円として千明の還暦祝いパーティが催される。千明は定年退職をし、小さなドラマ制作会社を作る準備を始めている。和平は愛する鎌倉市の副市長となった。まだまだふたりは現役だ。
 パーティのあと、長倉家のテラスで、和平と千明がふたりでしみじみと語り合っている。 「私たちは結局、このままなんでしょうかねえ」  和平がつぶやくと、千明は昔のプロポーズの件を持ち出す。ふたりともそれを覚えていたとわかり、ほっとするが、千明は「怖い」と心のうちを白状する。 「この年になって誰かと別れるのはもう嫌だ」と。それは和平も同じだった。一緒に暮らしてぴったりくっついて生きるより、隣人でいたほうがふたりにとってベストな距離感なのではないかと千明は提案する。賛同しながらも、和平は「朝起きたら、すっぴんのあなたが隣にいる暮らしをしてみたい」と言う。女性にとってはうれしい話だが、仕事最優先で生きてきた千明にとっては、それも怖いのかもしれない。 「約束しません? いつか怖さが薄れたら、そのときは一緒に暮らしましょう」  和平の出した小指を、千明は小指ではなく手でしっかりと握る。そこに和平を信頼する千明の気持ちが透けて見える。

尊重しあっていたら、恋愛より重いものを手に入れてしまった

 ふたりはいつも互いの心を読みあってきた。相手の顔を見れば「何かありました?」と言葉をかける。わかってしまうのだ、顔色や表情で、その日にいいことがあったのか悪いことがあったのか。それを互いに話し、ジャッジを下すことなく耳を傾けてきた。その時間の積み重ねが固い信頼関係を育ててきたのだろう。  恋愛至上主義ともいえる彼らの世代だが、恋愛感情より先に人間同士の考えや価値観を尊重しあっていたら、恋愛より重いものを手に入れてしまった。もはやいつ男女の関係になってもかまわないはずなのに、逆にその重い人間関係を失うのが怖くなった。それでもふたりはいつも隣にいる。しっかりそれを確認しあった最終回だ。  すっかり大人になった和平の娘が、恋人に「おとうさんとおかあさんは仲がよかった」と話す。「おかあさんを見るおとうさんの目の優しさ」を語り、母を失った父がどれほどしょげていたかを振り返る。 「でもおとうさん、千明さんといるとき、ときどきあの頃の目になるんだよね」  心から相手をいとおしみ慈しむまなざしを、和平は取り戻した。
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