結局のところ、本作におけるのぶというキャラは“ヒロイン”というよりは、当時を生きていた人の等身大のリアルを映し出す“鏡”なのだろう。鏡は嫌な部分も嘘偽りなく映すため、のぶにある種の嫌悪感に似た感情を持ってしまうのも無理はない。
視聴者が戦時中の彼女に反感を抱いた時点で、のぶのキャラ作り、そして今田美桜の役作りは大成功だと言えるのではないか。
6月23日から第13週「サラバ 涙」が始まった。戦争は終わったものの、戦争の悲惨さを経験し、子どもたちに「お国のため」を正解とする教育をしてきたことへの罪悪感から教師を辞めたのぶ。悲しみや後悔など戦争によって生まれた様々な感情とどのように向き合い、どのように軍国主義に染まった価値観を再編成するのか。
27日に放送された第65回では「高知新報」の採用面接で、軍国主義に浸っていた過去を悔いており、徐々に自分自身の“正義”を探していく姿勢を見せた。
のぶの心境の変化も鏡として映し出してくれれば、戦争を生きてきた人の心境に思いを馳せることができるかもしれない。稀有なヒロインであるのぶが、その役割を担ってくれることを期待したい。
<文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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