「え、これ本当にあったこと!?」“殺人教師”事件の真相を描く作品に衝撃。43歳俳優の“集大成”
誰もが被害者にも加害者にもなりうる
序盤は殺人教師、それ以降は気弱で心優しい教師と、主人公の印象が180度変わる作品であり、だからこそのエンタメ性と、一方の主張を「正義」だと決めつけるという問題提起を両立している。シンプルともいえる構造ではあるが、他にも考えさせられることがある。
たとえば、教師にも「暴力の痛みを知ってもらうために児童を軽く叩いた」ことがあったため、完全に体罰を否定できなかったところもある。そうした「負い目」が世間からは拡大解釈されてしまったり、自身の主張の正当性を完全には肯定できずに苦しむ……というのも、この世のさまざまな事象でありうる「落とし穴」ではないか。
また、ここまでの状況を作り出した、亀梨和也演じる週刊誌の記者は、一見すると冷静に物事を見つめているようでもあるが、彼は彼で「糾弾する」ことが目的化するあまり、それ以外の重要な視点を意識的にせよ無意識的にせよ「排除」してしまっているようにも思える。
彼は彼で「ごく普通の人」でもあり、同じような振る舞いをしないと、自信を持って言える人は少ないだろう。
さらに、絵に描いたような「ことなかれ主義」の校長が、「現実に確実にいる」のは言うまでもない。
総じて、この『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は「誰もが被害者にも加害者にもなりうる」恐ろしさを描いている作品と言っていい。
この信じられない出来事は現実にあり、同様の問題に巻き込まれる可能性がないとはいえない。何よりマスコミの報道やSNSでの言説を盲目的に信じて、それ以外の客観的な視点を忘れ、はっきりとした証拠も確かめないまま、誰かを糾弾、さらに誹謗中傷してしまうというのは、日常的にすらあり得ることだ。
ポスターのキャッチコピーにもある「なぜ、それを信じますか?」を、どんな事象でも常に問いかけるようにしたい。そんなことを再認識できるだろう。
<文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF








