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「投票に行く前に思い出したい」3つの名作ドラマが描いた“日本の闇”。朝ドラの“空気に流される地獄”が突き刺さる

 ドラマのほうがニュース番組よりも鮮明に、リアルを映し出しているのではないか?  そう思う瞬間が増えている気がする。昨年放送された朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)では、関東大震災の発生をきっかけに「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が放火した」といったデマが流れた結果、罪のない多くの朝鮮人が多数犠牲になった史実が描かれていた。東京都知事の小池百合子が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文の送付を長年拒み続けているなど、この事実はどこかタブー視されている。そのため、『虎に翼』を通してこの過ちを知った人も少なくないだろう。
『連続テレビ小説 虎に翼 Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド) 』

『連続テレビ小説 虎に翼 Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド) 』NHK出版

 『虎に翼』同様にいろいろなドラマでも、私たちが生きている世界の政治や社会問題を取り上げ、それらを身近に感じさせてくれる。とりわけ現在は選挙期間中だ。「どこに投票すべきか」「そもそも、投票に行く意味はあるのか?」という選挙に関する疑問のヒントを示してくれるドラマは少なくない。今年放送されたドラマに触れつつ、そのドラマが残したメッセージについて語りたい。

個人の不満を“自己責任”で片付けてはいけない

 まず紹介したいのが1月から放送された『御上先生』(TBS系)。官僚派遣制度によって県内屈指の進学校「隣徳学院」への出向を命じられた東大卒の文科省官僚・御上孝(松坂桃李)が主人公の学園ドラマだ。本作では生理の貧困から、第二次世界大戦で原爆が投下されたことに対する日米間の認識の違いまで、扱われたトピックスは実に幅広い。
御上先生

画像:TBSテレビ『御上先生』公式サイトより

 そんな本作では「パーソナル・イズ・ポリティカル(個人的なことは政治的なこと)」という視点を持つことの重要性を御上が生徒に説くシーンが多い。どうにもこうにも、自己責任論が根強くなった今現在、何かしらの不満を口にした人に対し、自己責任論を突きつけて“論破”を目論む人は結構いる。ただ、「パーソナル・イズ・ポリティカル」という言葉が示す通り、私たちが抱いている何気ない不満が発生する背景を辿ると、政治の歪みが見えてくるケースは珍しくない。「パーソナル・イズ・ポリティカル」という視点は、選挙期間中には特に念頭に置きたい考えである。

しつこいくらい考えることの重要性

 また、御上は生徒の疑問に答えをすぐに提示せず、「考えて」としつこいくらいに生徒に考えさせ、その考えを口に出すことを促す。最近では“ググって”答えを探し出す必要もなく、生成AIに質問すればタイパ良く回答が見つかる。加えて、ショート動画全盛の今の時代、それっぽい答えが次々と提示され、簡単に“知った気”になれるようになった。  そんな時代だからこそ、考えることの意義は相対的に増しているように思う。私たちの不満に耳を傾け、政治の問題として捉えてくれる政党、候補者をしつこいくらい考えて選びたくなる。
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選挙で“作られた空気”に踊らされる有権者
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