さらにその女性は、トナラー男に対して“私は見ているからな、何かしたらすぐに通報するぞ”という威嚇(いかく)オーラを出しながら、
とにかく男性から目を離さないことで瞳さんを守り、静かに戦い続けていたのです。

「おまけに、いざとなったら証拠を押さえられるようにスマホまで構えてくれていたらしくて。きっとそれが抑止力になって私は無事でいられましたが、彼女はトナラー男から『なにスマホこっちに向けてんだよ!』と因縁をつけられるリスクもあったのに……と胸が締めつけられる思いでしたね」
そしてトナラー男はその女性を睨みつけ、貧乏ゆすりをしてイライラを撒き散らしたりと応戦してきましたが、結局根負けして舌打ちしながら電車を降りていったそう。
するとその女性に「ごめんなさい、
もしあのトナラー男があなたを触ったりしていたら明らかな痴漢行為だし思いきって通報できたのだけど。隣に座って匂いを嗅いだりしているだけだし、何とでも言い訳できてしまうと思ったから見ていることしかできなくて」とすごく申し訳なさそうに謝られてしまいました。
「『謝るなんてそんな! 私のためにリスクを背負わせてしまって……お詫びと、救ってくださったお礼をさせてください』と必死に伝えましたが、ちょうど彼女の降りる駅に着いてしまい、結局何もできずに別れてしまったんですよ」
瞳さんは、ホームでにこやかに手を振ってくれた彼女にせめてもの思いで深々としたお辞儀をしたそう。
「もしあの女性が見張ってくれていなかったかと思うと……想像するだけで身の毛のよだつ思いでゾッとしますね」