亜紀さんは、嫌がる洋介さんの手を跳ね除け無理矢理スマホを奪いました。
「不倫の証拠を探そうとしたら洋介が『あぁ〜』と肩を落としたので、これはやっぱり黒確定ってことだなと覚悟を決めましたね」
亜紀さんはそのまま鬼の形相でスマホをチェックしました。

「そしたら実は女の影なんかまるでなく、
洋介が和風の衣装に身を包み、元気によさこいを踊る写真や動画がいっぱい出てきたんですよ」
話を聞くと、最近洋介さんは亜紀さんに内緒で地元のよさこいサークルに入会したそう。
「私たちは毎年一緒に夏祭りに行っているんですが、今年はそのお祭りで、
いきなりよさこいを踊るかっこいい自分の姿を見せて私をビックリさせようと、楽しみにしていたって言うんです」
洋介さんはワクワクしながら亜紀さんに隠れて特訓を重ねていたのでした。
「お風呂でスマホの動画を見ながら振りを覚えたり、出張や飲み会が増えたのも私に隠れて練習するための口実で、日焼けも初めて衣装を身につけてのリハーサルにテンションが上がってしまい何度も踊ってしまったせいだったんですよ」
亜紀さんは、安易に不倫を疑ってしまった自分を猛烈に反省したそう。
「洋介はただかっこいい姿を見せたいと頑張っていただけなのに、うたぐり深い私の勝手な思い込みのせいでせっかくのサプライズを台無しにしてしまったとかなり落ち込みましたね」
亜紀さんは洋介さんに謝りました。
「洋介はサプライズが失敗してしまったことを残念がってはいましたが、特に怒ったりはしていなかったので改めて大らかな人だなと感心してしまって」

そしてお祭り当日。亜紀さんは特等席を陣取り洋介さんの所属するよさこいチームを待っていると……。
「颯爽と踊る洋介を見て、また不倫疑惑をかけてしまったことを後悔しました。これから何かあった時は疑う前にきちんと話し合わなくてはと、当たり前のことかもしれませんが再確認することができました」