両親、あるいは祖父母から、「食事を残すなんてもったいない」「無理してでも食べなさい」など、注意された経験はありませんか。または、「給食を全部食べるまで席を離れてはいけない」など、教師に見張られた経験がある人もいるのではないでしょうか。
両親や祖父母、教師に非があったというより、貧しかった時代の反映や当時の教育方針や価値観のせいもあるでしょう。
とはいえ、子供にとって大人から叱られたという記憶は、その言葉とともに暗い影を落とすしてしまいます。ももこの会食恐怖症も、過去の記憶が要因になっていました。
食べなきゃ、と思えば思うほど食べられなくなる。頭の中で責め立てる声に怯えて、体が硬直してしまう。何も食べられずに帰宅すれば、生き返ったようにお腹が鳴るのです。
たちまちむなしくなって、ももこは泣いてしまいます。どうにもならないつらさや痛みにもがき、解決策を模索したももこを救うのは精神科医であり、やさしい同僚や上司であり、ももこの気づきと努力でした。
体と心の健康、その源となるのは食べ物であり、楽しくおいしくいただける時間ではないでしょうか。本書は食事と、食事がもたらす心の作用をとおして、ももこが自分の人生を生きなおす物語です。ももこがどうやって会食恐怖症を克服したのか、あなたの目で確かめてみてください。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
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