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“フェミ叩き”を真似する少年たちが急増したワケ…女性作家が指摘「私たちは分断させられている」

アルゴリズムによって“分断させられている”のかもしれない

『SISTER“FOOT”EMPATHY』(集英社)

『SISTER“FOOT”EMPATHY』(集英社)

――コロナ禍以降、SNS上での分断が加速しているように感じます。本の中でも「アルゴリズムによる煽り立て」が議論を過熱させていると指摘されています。 先日、新聞社の関係者にお会いした際、フェミニズムに関する記事がネットで非常にPV(ページビュー)を稼ぐという話を聞きました。しかし、それは多くの人がフェミニズムに関心を持っているからでは決してなく、何かと炎上しやすいコンテンツだからだそうです。PVを稼ぐ目的で、わざと煽るような見出しをつける傾向も増えていますよね。 ――実はプラットフォーム側から個人が分断させられている可能性もありそうですね。 プラットフォーム側は、コメントがたくさんつくことで盛り上がるので、そうしたコンテンツを規制しない。ビジネスとして、お金になるコンテンツを流すわけです。そうした「炎上ビジネス目的」のコンテンツの一つが、ミソジニー(女性嫌悪)を煽ることになっているとしたら、本当に恐ろしいことです。女性たちがSNSをボイコットすれば、プラットフォーム側も考えざるを得なくなるかもしれないと、本にも書きましたが、それは半分本気で思っています。 私たちは知らず知らずのうちに、アルゴリズムによって分断させられている可能性があります。昔から「分断統治」という言葉がありますが、支配者やプラットフォーム運営者からすれば、末端の人々やユーザーがお互いにいがみ合っていれば自分たちの統治の妥当性に目が向かないので都合がいい。SNSはその分断をさらに加速させるツールになりつつあるのかもしれません。 ――アルゴリズムによってミソジニーが助長されていることについて、もう少し教えてください。 息子が中学生だった頃のコロナ禍では、イギリスは厳格なロックダウンが実施され、子どもたちは家に閉じこもるしかありませんでした。その結果、多くのティーンエイジャーがYouTubeなどでエクササイズの動画を観るようになりました。すると、アルゴリズムは筋肉増強剤などの宣伝をするミソジニー的なインフルエンサーの動画を次々と提示するようになったのです。 その結果、コロナ禍前にはいなかったような、ミソジニー的な価値観を持つ少年たちが急増しました。彼らはフェミニズムが何かをよく知らないまま、「フェミニズムなんてクソくらえ」とインフルエンサーたちの真似をして叫び、多くのフォロワーを獲得しているインフルエンサーはクールなんだと思って、彼らのように強い言葉を使うようになってしまうのです。SNSは、こうした考えの偏りを加速させ、グレーゾーンのない「白か黒か」という二極化を助長していると感じます。

排外主義的な政党が人気を得る社会とは

ブレイディみかこさん――昨今の日本では排外主義的な政党が一定の存在感を示しつつあります。この動きをどのように見ていますか? それは日本だけでなく、世界的な動きとしても見られます。私がイギリスに来た1990年代は、トニー・ブレア首相の時代で、移民の労働力が必要だったこともあり、多様性が推進されていました。しかし2010年代に緊縮財政を掲げる保守党政権に変わると、医療や教育、福祉など公共サービスへの支出が絞られ、社会に歪みが生まれました。 その影響をもっとも受けるのは、収入の低い人々です。富裕層は、公共サービスなんて使う必要がありませんからね。末端の人々の不満が募ると「これは移民のせいだ」と排外主義的な政党が声を上げ、人気を得る。本来、政府の政策に問題があるにもかかわらず、怒りの矛先を同じように苦しんでいる移民に向けることで、分断が深まってしまいます。 また、住宅問題も深刻です。多くの都市で若い人が家賃を払えないほど住宅費が高騰していますが、これも「移民のせいだ」とされます。しかし、実際には多くの資産家が家を投機の対象として買い、誰も住まないまま放置して転売したり、住宅価格や家賃をどんどん釣り上げていることが根本的な原因です。本来はそうした投資家の強欲さに目を向けるべきなのに、私たちは分断させられ、お互いにいがみ合わされているのです。 ――そういった価値観の違う人たちが共存していくには何が必要だと考えますか? やっぱり、最終的には対話することしかないと思います。私は異なる政党を支持する人とも、わりと日常的に話をしています。最初から「なぜその政党を支持しているのか?」とは聞きませんが、友人として付き合っていく中で、その人の仕事や家庭環境、趣味などを知っていくと、「ああ、だからその考え方に行き着いたんだな」とわかってきますよね。 そうなると、頭ごなしに否定するのも何か違うよなと感じるようになりますし。相手を知ろうとすれば、いつもそうとはいいませんが、だいたい対話の糸口ぐらいは見つかるものです。ネット上では不可能な、地に足のついた対話が、現実世界では可能となるような気がします。
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世代を超えた「縦のつながり」からなるシスターフッド
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