“フェミ叩き”を真似する少年たちが急増したワケ…女性作家が指摘「私たちは分断させられている」
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者であるブレイディみかこさん(60歳)が、エッセイ集『SISTER“FOOT”EMPATHY』を刊行しました。
コロナ禍以降の日本を、イギリスを拠点に活動してきたブレイディさん独自の視点で見つめ直すエンパワメント本です。現代の日本社会が抱える男女格差(ジェンダーギャップ指数148か国中118位)や政治的無関心、SNSによる分断といった課題についても言及しています。
「女性の連帯」や「第3の居場所」の重要性などを語ってもらった前編に続き、後編では、現代の日本が抱える問題、そして向き合い方について聞きました。
【前編を読む】⇒「日本は女が住む場所じゃない」と思ったことも…イギリス在住作家が感じたイギリスとの“おおらかさの違い”
――『SISTER“FOOT”EMPATHY』では「フェミニズム」や「シスターフッド」について度々触れられていますが、日本ではそういった単語を時に毛嫌いする人もいるように感じます。著書を書き進めるにあたって意識したことはありますか?
イギリスの女性誌には必ず政治に関する記事が何かしら掲載されていますが、日本ではそうしたコーナーがほとんどないですよね。だから、今回の著書は政治に関心がある人向けになりすぎないように、誰でもわかるように書くことを心がけました。たとえば、「搾取」という言葉を「ぼったくり」と言い換えるなど、身近な言葉を使うことで、読者が「ああ、こういうことだったのか」と実感できるようにしたかったんです。
――言葉を変えるだけで、社会や政治的なことが身近に感じられると。
「シスターフッド(女性同士の連帯)」も同じです。今回の本にも書いていますが、1975年、アイスランドで女性たちが仕事や育児を一斉に休んだ「女性の休日」というストライキがありました。
この運動に参加した女性のインタビューや当時の映像をまとめた『女性の休日』というドキュメンタリー映画が10月に日本でも公開されるのですが、その中で、参加者が「男性を否定するためにやったのではない。私は男性を愛している。ただ、少し変わってほしいだけ」と語っていたのが印象的でした。女性はシスターフッドによって男性を敵にしたいわけではないのです。
また、ストライキではなく「女性の休日」と呼んだことも、イデオロギーや階層を超えて多くの女性たちが参加した理由になったようです。言葉を選ぶことで、共感を生み、より多くの人に伝わる。結果的に保守的な女性たちも含め、アイスランドの女性の9割がストライキに参加しました。
――アイスランドは現在、15年連続でジェンダーギャップ指数1位を記録していて、男女平等がもっとも進んだ国と言われています。その背景には「女性の休日」など、先人たちの取り組みがあると思います。私たちの日常生活と政治の関わりは、やはり避けられないものなのでしょうか。
政治から完全に切り離すことはできません。とはいえ、人間は政治だけで生きているわけではありません。アナキスト研究家の友人が、「いきなりステーキ」を食べた感想を論考に書いたら、「この資本主義者!」と非難されたという話を聞きました。個人的なことのすべてが政治思想の声明でなければならない社会は息苦しそうですし、生活のすべてが政治に介入されたら生きづらくなってしまうと思います。
――ブレイディさんご自身の経験で、シスターフッドに助けられたことはありますか?
特に、私が保育士の資格を取った当時の託児所での経験は大きいです。そこは貧困家庭やシングルマザー、難民申請中の家族のお子さんを預かる特殊な託児所でした。中にはソーシャルワーカーが介入している家庭の子どももいて、暴力的な子がいることも珍しくありません。髪の毛が何本も抜かれてしまうこともあったほどたいへんな職場でした。
しかし、同僚は女性が多く、私の師匠も含めて、まさに「シスターフッド」があったからこそ乗り切れたと思います。メンタルに問題を抱えている人や、さまざまな事情を抱えた人、いろんな国の出身の人が働いていましたが、みんながそれぞれの靴を履き、必要な時には助けの手が伸びて来た。
一人では乗り越えられない困難も、周りで見てくれている仲間がいるからこそ、協力して乗り越えることができる。それがシスターフッドなのだと実感しました。
「男女平等がもっとも進んだ国」でかつて起きた運動
――『SISTER“FOOT”EMPATHY』では「フェミニズム」や「シスターフッド」について度々触れられていますが、日本ではそういった単語を時に毛嫌いする人もいるように感じます。著書を書き進めるにあたって意識したことはありますか?
イギリスの女性誌には必ず政治に関する記事が何かしら掲載されていますが、日本ではそうしたコーナーがほとんどないですよね。だから、今回の著書は政治に関心がある人向けになりすぎないように、誰でもわかるように書くことを心がけました。たとえば、「搾取」という言葉を「ぼったくり」と言い換えるなど、身近な言葉を使うことで、読者が「ああ、こういうことだったのか」と実感できるようにしたかったんです。
――言葉を変えるだけで、社会や政治的なことが身近に感じられると。
「シスターフッド(女性同士の連帯)」も同じです。今回の本にも書いていますが、1975年、アイスランドで女性たちが仕事や育児を一斉に休んだ「女性の休日」というストライキがありました。
この運動に参加した女性のインタビューや当時の映像をまとめた『女性の休日』というドキュメンタリー映画が10月に日本でも公開されるのですが、その中で、参加者が「男性を否定するためにやったのではない。私は男性を愛している。ただ、少し変わってほしいだけ」と語っていたのが印象的でした。女性はシスターフッドによって男性を敵にしたいわけではないのです。
また、ストライキではなく「女性の休日」と呼んだことも、イデオロギーや階層を超えて多くの女性たちが参加した理由になったようです。言葉を選ぶことで、共感を生み、より多くの人に伝わる。結果的に保守的な女性たちも含め、アイスランドの女性の9割がストライキに参加しました。



