NHK大河『べらぼう』キーパーソン演じる29歳俳優の“眉間”が気になる…『虎に翼』でも光る細やかな表現とは
今年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合・以下『べらぼう』)も後半戦に突入したが、キーパーソンとなる松平定信を演じる井上祐貴のある微動が気になる!
第30回の初登場場面から何度も執拗に動かす眉間。皺が寄る分だけ、定信役の野心と井上による熱心な演技の気概が伝わるようだ。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作で眉間の動きが気になる井上祐貴の魅力を解説する。
横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう』第30回冒頭のワンショット目が美しい。松平定信(井上祐貴)が読み物を熟読している。カメラはその手元と顔を寄りで捉える。
フレームの外からは川のせせらぎの音、鳥の鳴き声が心地よく聞こえる。カメラは流麗な動きで引いていく。定信が第一声を発する瞬間、眉間がパキッと動く。すぐにもう一度動く。立ち上がった定信をカメラがフォローして、さらにパキッ……。
寺田心が演じた田安賢丸から成長した姿で初登場する定信は、どうして再三眉間をパキパキ動かすのか? 的確なカメラワークにコミットして調和する井上祐貴にとっても初登場の瞬間であるこの場面。満を持してパキパキ動かすかのような眉間の魅力が場面全体を流動する。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 前編 (NHK大河ドラマ・ガイド)』NHK出版
満を持してパキパキ動かす眉間
精魂込める気合いの微動
他の場面でも何度も確認できる。田沼意次(渡辺謙)を失脚させようと幕政に参加するようになる定信が、溜間で顔を合わせて今度は一度だけ力を込めて眉間をパキッ。 さらに反田沼派との食事場面で他の面々の意見を興味深く聞く定信が、ここでも眉間に力を入れる。 執拗なまでに繰り返される、この眉間の動き。気になるなぁ。初登場場面から井上祐貴が端正な微動の演技で表現している。眉間に皺が寄る分だけ定信の野心が伝わる。自分が老中に取って代わるために、着実に準備する身震いともいえるだろうか。 あるいは、定信の野心に比例するかのように、井上もまた演じる役に精魂込めようとする気合いの微動とも読める。いずれにしろ、朝ドラ初出演作『虎に翼』(NHK総合、2024年)での判事役も忘れがたい井上は、NHKドラマ作品で自らの演技を手堅いものにしている。
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