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「タワマンがなんぼのもんじゃい」40代女性作家が98万円で温泉の出る築75年の家を買ったワケ

 定年を迎えると家を借りることは難しくなると言われます。
作家・高殿円さん

作家・高殿円さん

 一般庶民にとって、大きな大きな買い物です。しかし、「ローンを組むことを考えるとそろそろ」と言われてしまい、マンション情報サイトに行って、あまりの値段に引き返す。30代・40代なら経験のある人も多いのではないでしょうか。 『トッカン』『上流階級 富久丸百貨店外商部』など、数々のヒット作を生み出し、原作者・作家として活躍する兵庫県出身・在住の高殿円さんは、兵庫県に自宅をもちつつ、伊豆に98万円の温泉の出る築75年の家を2023年に購入。約200万円でDIY&リフォームしたそうです。 購入の軌跡を2024年4月に同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』として発行、自費出版物であるにも関わらず、大きな注目を集めました。異例のロングセラーとなり、「COMICポラリス」でコミカライズもスタートしました。  自分だけの資産となる「家」が欲しい! どうすればいいか、温泉付き物件・不動産に興味津々のライター・宇野なおみが聞いてみました。

コロナ禍をきっかけに「人生で何が重要か」を考えた

98万円温泉ハウスからの眺め

98万円温泉ハウスからの眺め

――まず、兵庫県出身・在住である高殿さんが、関東の温泉付きマンションを買おうとした理由を聞かせてください。 高殿円さん(以下、高殿):きっかけはコロナ禍です。以前は本当に海外旅行が大好きで、世界中巡っていました。飛行機のチケットを買うために生きていたのに、生き甲斐がなくなってしまった、という感じだったんですね。 ――世界中の人が、未曽有の事態に直面し、閉鎖的なストレスを抱えていた時期でしたね。 高殿:コロナ禍当時、ひとり息子は小学校6年生。卒業式も簡易的なものでした。ただ、思った以上に子どもが柔軟で驚きました。もともと息子はとにかくこだわりの強い、エレベーターが大好きな子。小さいころは目が離せなくて、お互いにべったりでした。 だけど、コロナ禍を通じて大人になったのか、自分の好きな世界ができてきた。今はもう大学受験生で、私が手を放す時期になったんだなと。じゃあ、私の人生なんだったんだろう?「私はわたしのために生きていかないと」と思い、ゆっくり自分自身と向き合いました。 ――旅に行けない中、「自分のために生きるには、人生で何が重要か」をお考えになったと。 高殿:結果、そうだ、「温泉」だ!って(笑)。基本オタクなので、ずっと自分の部屋にこもってネトフリ見ていたいんですよ。だから大浴場じゃなく、自分の部屋で温泉のかけ流しにつかって、海を眺めてボーっとしていたい! それで、二拠点生活を決意しました。

物件探しは「温泉地の民泊に泊まりまくった」

98万円温泉ハウスの内装

約200万円でDIY&リフォームした98万円温泉ハウスの内装

――聞いているだけでうらやましいです。どうやって物件を探されたんですか? 高殿:もともと起きたらまずポータルサイトをチェックするくらい、不動産が大好きで。株式はほとんどやっていなかったかわりに不動産に「全集中!」してきました。一番初めは28歳で一軒家を購入。5年でローンを返済しました。その後タワーマンションも買ったこともありましたし、東京に投資用を買ったりいろいろやってきたんです。今回はまず、温泉の出る土地に行って民泊に泊まりまくりました。 ――すごい! では、不動産投資に関してはベテランでいらしたんですね。Xの投稿では「草津、大分、道後、有馬、長野、北海道、日本中ありとあらゆる有名無名秘湯温泉地に行った」と書いてらっしゃいましたね。 高殿:実際草津はお湯がすごくよかった。軽井沢も素敵でした。ただ、関西からのアクセスが悪いとか、いろいろな兼ね合いを検討しました。時間はあったので本当に日本中巡りましたよ。 ――そのあたりも詳細をお伺いしたいところですが……。でも、もともと不動産投資に慣れている高殿さんだからこそ、見つけられた、できたことではないですか? 高殿:再現性の実証は絶対するタイプなので、私以外にもできるような探し方・買い方を知人や友人に伝えて回っています。最近は頼まれて、不動産購入をサポートすることも多いです、そういう職業じゃないのに(笑)。皆、どんどん買っちゃって、温泉に浸かって幸せそうです。一緒にDIYすることもありますよ。 ――ご自分で更新されているnoteも「おばあ」という一人称で、ワクワクするDIYライフなどを発信されていますね。 高殿:30代、40代の人に、当時私が知りたかったことをどんどん伝えていきたいんです。今回のインタビューもそうですけど、発信しているといろんな人が「おもろいことをやっているおばあがいる」と話を聞いてくれて、とても嬉しいです。2019年に連載から本になった『35歳、働き女子よ城を持て!』(KADOKAWA)も、女子に家を与えたくて書いた本です。ありがたいことにたくさんの人が読んでくださり、ロングセラーになりました。 ――今回の同人誌も、そうした「若い世代に伝えたい」という思いが原動力でしたか。 高殿:コロナ禍を無為にしたくなかったという思いもあります。『98万円で温泉の出る築75年の家を買った」は、法人格を持った出版社として発行しました。書店さんやラジオ局に営業しに行くなど、こつこつ自分でやっています。ありがたいことにヒットしてくれましたが、同時に、いろいろと任せられる出版社さんとする仕事のありがたみを嚙み締めています(笑)。
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初心者はどうすればいいの?高殿流失敗しない不動産選び
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