──どのようなきっかけで更新を再開されたのでしょうか。
原田:更新は止まっていたものの、メディアに取り上げられたことで、より多くの方が動画を見てくださり、育児に悩む親御さんから「育児に前向きになれた」「大変な子育てだけど報われた気がする」といった温かい声を数多くいただくようになったんです。
何気なく始めた実況が、人々の心を動かしている。みなさんのコメントを見ていくうちに、極端に言えば「人の命を救うんじゃないか」とさえ感じたんですね。
──コンテンツを必要としている方に届いていたんですね。
原田:あわせて、『WBS』で熱い信念を持って事業に向き合う経営者の方に取材をする中で、「エンタメの世界でさらに世の中に貢献できる仕事がしたい」という思いが強くなっていきました。
──動画の更新を止めていても、情熱が高まっていったのですね。
原田:はい。もともとエンタメの力で子どもたちを笑顔にしたいという思いからテレビ局に入りました。だからこそ、視聴者の方からのコメントが胸に響いたんです。その声を受けて、「実況ベイビー」のように子育てとエンタメを組み合わせ、社会にインパクトを与えたいという思いが強くなりました。そこから、このコンテンツを本格的に育てようと決心し、会社を辞める準備を進めていきました。
──安定したアナウンサーの仕事を辞めて事業を始めることに、ご家族はどのような反応でしたか?
原田:妻は案外驚いていませんでした。20代のうちにこの人は会社を辞めるだろうなと思っていたようです。ただ、「万全の体制であなたの仕事を応援できるように、何をするのか、家族はちゃんと養えるのか、私にプレゼンをして納得させてほしい」と言われました。僕はアナウンサーだったので、今までパワーポイントを使ったこともありません。必死で16枚の事業計画書を作って妻にプレゼンをしました。
──すごいですね。
原田:妻に告白した時よりも緊張しました。結果、妻もちゃんと納得してくれたので起業に至り、「株式会社Nicoli(ニコリ)」という会社を立ち上げました。アナウンサーを辞めてすぐに会社を立ち上げたわけではなく、退職後に一度スタートアップの会社で働かせていただいて、事業を学んだりと準備はしていました。実況ベイビーを含め、子育てとエンタメをかけ合わせて世の中を楽しくするのが願いです。エンタメの力で世界中の親子をニッコリさせる。親子の幸せな時間を増やしたいですね。
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コロナ禍の「赤ちゃんに実況をつけたらかわいいだろうな」というひらめきで始まった、実況ベイビー。様々なタイミングが重なり、子育てをエンタメとかけ合わせて、子育てをもっと楽しく思えるような社会にしたいという原田さんの大きな願いに育ちます。そして、そこには見る人全員が平和で幸せであってほしいという原田さんの願いが込められていました。
【原田修佑】
1993年生まれ、愛知県豊橋市出身。二児の父。元テレビ東京アナウンサーとして『WBS(ワールドビジネスサテライト)』やスポーツ実況を担当。現在は
株式会社Nicoliの代表として、YouTubeチャンネル「
実況ベイビー」をはじめ、親子が安心して楽しめるエンタメコンテンツを企画・制作している。
<取材・文/大夏えい>
大夏えい
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作。