心が晴れなくても、アイドルでいる間は笑顔をふりまき、元気いっぱいに踊ります。可愛くて、つねにキラキラ光っている。それが世間の求める兒玉遥で、兒玉さんにとってもアイドルの理想像だったのでしょう。
一方で、作り上げられた兒玉遥がめまぐるしいスピードで消費されていく、そんな感覚もあったのではないでしょうか。ギャップに苦しみ、ストレスの矛先は食欲へ。
仕事とレッスンの間は無心になれるものの、夜、ひとりになればその空虚を埋めるように食べまくり、太らないように吐くのです。反省ノートにはネガティブな言葉を書き続け、SNSで自分にぶつけられたネガティブな言葉を追うという、負のループ。
さらに、18歳から数年間は美容整形にハマり、ヒアルロン酸注入などに計1000万円も使ってしまったといいます。
<見る人が見れば明らかに「ヒアルロン酸を入れすぎた顔」になっていました。顔のバランスは無視で、顎がとがり鼻が異常に高くなる。自分的にはこれをやらないと醜くなる、そう思っていて、おかしな顔になっていることに気がつけなかったのです>(同書より)
うつ、過食、整形依存――それでもアイドルでいたい!という兒玉さんの魂の叫びすら、本書からは聞こえてくるのです。が、兒玉さんの心身はもう限界を超えていました。
2017年の年末に、兒玉さんは二度目の休養に入りました。実家に連れ戻された兒玉さんからは一切の感情が消え、ただ天井を眺め続ける日々。
「感情をほとんど出せなくなったうつの症状から、『こちら側の世界』に戻ってこられる人は3割程度。そのなかでも、もとのように元気になれる人は1割程度です」
心療内科の医師に、兒玉さんのお母さんは告げられたといいます。死刑宣告のような言葉を、どう受け止めたのでしょうか。お母さんは、兒玉さんの生きたいという力が眠っているだけだと信じました。復活する1割に希望を託したのです。