兒玉さんには、心療内科のカウンセリングで印象に残っている会話があります。世の中で変えられない3つのものについて、です。
「ひとつ目は天気、ふたつ目はサイコロの目、3つ目は相手の心」
兒玉さんは今まで、アンチを含む他人の評価を変えようと必死にあがいていました。兒玉さんに限らず、数多の情報にさらされた私達は他人からの視線やコメントに過剰反応してしまい、自己肯定感を低くしてしまいがち。
否が応でも注目の的になるアイドルなら、光をあびるぶん、闇もおそってくるでしょう。あらぬことで誤解をされ、攻撃され、弁解もできない。悪いのは自分だと、自らを追いつめてしまう。
でも、自分がいくら頑張っても変えられないものが間違いなくあり、なにもかもを自分のせいにしなくてもいい。
この気づきが、少しずつ兒玉さんを楽にしていきました。

撮影/山川修一
暴飲暴食と治療薬の影響で、休養中に20キロ体重が増えてしまった兒玉さん。筋トレやウォーキングを重ねて、半年で10キロの減量に成功。ゆっくりと生きるリズムを取り戻していきます。運転免許を筆頭に、心理カウンセラー、ヨガインストラクター、ピラティスのインストラクターも取得しました。
回復するために欠かせなかったのは、家族の存在です。なかでも「人と同じでなくていい」「全方位から守る」と覚悟を決めて、兒玉さんをサポートしてきたお母さん。うつは、本人は当然のこと、周囲の人々も悩み、時に傷ついてしまうもの。とはいえ、決して他人事ではなく、心の風邪は、いつかかってもおかしくはありません。だからこそ本書はリアルで、胸に迫ってくるのです。