新型ウイルスが流行し、世界全体が活動休止になった2020年。<親の脛かじり虫>だった坂口さんは、ひとり暮らしをはじめます。
家族から独立して、誰もが最初にぶつかるのが自炊じゃないでしょうか。坂口さんもそのひとり。外食ばかりしていられないと、料理に挑戦するのですが。
超簡単だと高をくくったキャロットラペで、学んだのは無償の愛。なぜキャロットラペが愛の気づきに変換されるのか、おかしくも泣けるエピソードはぜひ、本書で堪能してほしいです。
その他、かつてアトピーとニキビ面で悩んだこと、少し前まで困窮生活をしていたこと、自虐のどん底期、2022年頃に「このままでは死ぬ」と言われて緊急入院したことなども、ユーモラスに綴られています。

『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』(著:坂口涼太郎)/講談社
世の中には、才能あふれる人、存在するだけで光り輝く人、生まれながらに裕福な人、さまざまいて、比較したらきりがないほどです。落ち込んだり、浮上したりを、ただ繰り返せば溺れてしまうだけ。
泣いても笑っても、人生は一度きりです。
<せっかくの一回やから、天国も地獄も行ったほうが得やん。>
すべての経験を糧にして、自分だけの舞台、ちゃ舞台の上でおどるのです。本書に綴られたたくさんのメッセージは、独特の個性を持った坂口さんだからこその、生きる知恵に思えてきます。

『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』(著:坂口涼太郎)/講談社
<私は永遠を『らめ活』して、いま生きているという偶然を全力でおもしろがり、またなんてないことを肝に銘じて、お涼ハウスのちゃぶ台の上に『お涼理』を並べながら粛々と生活していこうと思う。>
息切れしそうな日常で、自分だけのおどり方を見つけていく。ネガティブをポジティブに変える秘訣が、本書には詰まっています。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx