店員さんは祐未さんの方を見て軽くおじぎをすると「変な絡まれ方でしたね、大丈夫でした?」と優しく声をかけてくれました。
「私が『はい、助かりました。すごい切り返しですね』と答えると、『うちの店は、カゴの平和は守る主義なんで』とニカッと笑うので、私もつい笑ってしまいました」

※画像はイメージです
後日、祐未さんがたまに話をするそのスーパーのレジ打ちの女性に話を聞くと、例の“カゴ見るなおじさん”はごくたまにスーパーに出現するものの、笑顔で近づいてポジティブな言葉をかけ続ければ、最後はご機嫌で帰ってくれるんだそう。
「しかもその接し方を編み出したのは、あの助けてくれた男性店員さんだそうで……優しい人なんだなとなんだかしみじみしてしまいました。スーパーって本当にいろんな人が来るから、店員さんはそれぞれに合わせた対応が求められるんでしょうね」
祐未さんは「もし自分が店員さんだったら、クレームを取り下げてもらえるまで、ただひたすら謝ることしかできないと思うし、とてもあの男性店員さんのように“カゴ見るなおじさん”の心に寄り添ったコミュニケーションも、笑顔で帰ってもらえるまでの関係性を築くことも、とてもできない」と考えてしまいました。
「あの出来事をきっかけに、私も『相手の立場で考えてみること』の大切さを少しだけ考えるようになりました。
状況を変えたのは、謝罪でも正論でもなく、相手の心をほぐす一言だったんですよね。いつか私も、あの店員さんみたいに誰かの不安を笑顔に変えられる人になれるといいなと思います」
ちなみに例の男性店員さんは、スーパーで見かける度に満面の笑みで会釈してくれるようになったそうです。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop