「ストリッパーは体を売ってるのと同じ」潔癖症役の浜辺美波と、いかがわしい渋谷の深い縁|ドラマ『もしがく』
いつ終わるともわからない果てしない渋谷の工事以上に煩わしいのは、渋谷駅前のスクランブル交差点である。昔からここは混雑していたが、近年、自撮り棒に装着したスマホを掲げて撮影しながら歩くインバウンドが芋洗い状態で、ここはほんとうに歩く場所なのかと疑うほどだ。
世界最大規模の交差点――インバウンドが行ってみたい観光スポットを擁した世界的な大都市のひとつのような渋谷。だが、名前のとおり、「谷」である。この交差点は、道玄坂や宮益坂の下にあって、すり鉢状の底部分。宇田川町という名もあるように川も多く(宇田川はいまは暗渠)、大雨が降ると、水害リスクが大きい場所だった。2015年の集中豪雨では地下鉄構内や渋谷地下街に雨水が流入する大水害があり、20年、東口に25mプール約13杯分の雨水を貯めることのできる雨水貯留施設が作られた。
日本のシリコンバレーとも言われ、デジタル都市のような場所ながら、渋谷は案外、ジメッとした街なのだ。84年の渋谷を舞台にしたドラマ『もしがく』こと『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系、水曜夜10時、脚本:三谷幸喜)で描かれる渋谷(八分坂と呼ばれる架空の地域)が、わい雑過ぎて渋谷っぽくないとも言われている。でも、渋谷の歴史を知ると存外、渋谷ってそんなものなのかもしれない。
【特集】⇒『もしがく』ドラマレビュー
「私にはどうしても理解できないんです。お金のために人前で裸になる。どうしてそんなことができるんですか?」
「楽しませるというと聞こえはいいですけど要は体を売ってるのと同じではないですか」
『もしがく』の登場人物のひとり・巫女・江頭樹里(浜辺美波)は八分坂にあるストリップ劇場で働いている人たちに偏見を持っている。
八分坂は道玄坂をモデルにした場所で、道玄坂にはいまもストリップ劇場がある。そして近くには神社もある。八分坂は聖と俗が混在している街なのだ。
“おしゃれ”だった渋谷も一皮めくれば…
ドラマ『もしがく』が描く80年代の渋谷
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