とはいえ、本作が『イカゲーム』の“パクリ”に陥っていないことも重要だ。作中では、時に山の中で、時に街の中で、繰り広げられる戦闘シーンは迫力十分。自宅のそれほど大きくないテレビで視聴していたが、映画館で観ているような没入感を覚えるほど、画の引力が強い。
また、どこか“ゲームっぽい”ところも戦闘シーンの魅力だ。1話で門から出るために、愁二郎が乱戦を潜り抜けようとする様には爽快感があり、人気ゲーム『無双シリーズ』が頭に浮かぶ。加えて、4話の茶屋内での戦闘シーンは、VRゴーグルをかけてプレイする対戦ゲームのような、「実際にその場にいる」と錯覚してしまうほどの映像体験を味わえた。

首が跳ねられたり、血が飛び散ったりなど、グロい描写は多い。それでも画面に引き込まれてしまうのは、「ゲームで見たことがある」という既視感と、「ゲーム内でしかできない動きを生身の人間が再現している」という真新しさが両立しているからだろう。こうしたフレッシュかつハイクオリティな戦闘が、『イクサガミ』を単なるデスゲーム作品ではなく、強いオリジナリティを持つ作品へと押し上げている。
主役の岡田の存在感も当然無視できない。映画『ザ・ファブル』の出演をはじめ、アクション俳優として高い評価を集めているが、そのキャリアは本作でも遺憾なく発揮されている。槍や弓を持った侍や鉄砲を持った隊員と対峙するが、愁二郎の“獲物”は基本的に刀だ。対戦相手は違えど、同じ“プレイヤー”だとパターン化しやすい。

しかし、対戦相手によって前転して攻撃を回避したり、刀で弓を叩き落としたりなど、バリエーション豊かな戦い方を見せており、飽きることはない。加えて、かつての仲間・櫻(淵上泰史)と対戦する5話では、愁二郎は鎖鎌や槍といった多種多様な武器を使いながら応戦していた。戦闘シーンにおける引き出しの多さに驚かされる瞬間ばかりで、岡田が積み上げてきた経験値だからこそ成立しているシーンは少なくない。