酔って目覚めたら、アルバイトが全員いなくなっていた
――お酒をやめられなくなったことで、特に大変だったことは何ですか?
エクボさん(以下、エクボ):何よりも仕事がまともにできなくなったことが大変でした。「このままではいけない」と思って禁酒した期間もあったのですが、お酒を我慢することで、無自覚に不機嫌な態度を取るようになってしまいました。
その結果、お客様からクレームが入ったり、アルバイトの子からも「ずっと焦っているように見える」と指摘されました。自分では愛想良く振る舞っているつもりだったのでショックだったし、本当にダメな店長だったと思います。
――お酒が原因で、店長としての信頼も崩れてしまったのでしょうか。
エクボ:アルバイトの子たちは、酔っ払って働く私に不信感を抱いていたと思います。決定的だったのは、営業中に泥酔して暴言を吐いてしまった事件です。
アルバイトの子がミスをした際、私が店長として謝罪したのですが、お客様に強く叱られてしまうということがありました。そのときは減酒を頑張っていたのですが、自暴自棄になり営業中にまたお酒を飲んでしまい……その後の記憶がまったくありません。
気づくと閉店していて、私以外誰もいませんでした。翌日からは、外国人スタッフを除いて、2週間ほどアルバイトの子たちが出勤しなくなったんです。後から聞いた話では、泥酔状態の私は皆に当たり散らし、「帰れば?」「残りのシフトも来なくていい」と言い放っていたそうです。
その期間は、他店からヘルプに入ってもらい、何とか営業を続けました。その後、皆に謝罪して戻ってもらうことができましたが、それ以来、お酒を飲むことが本当に怖くなりました。
――お酒をやめようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
エクボ:何度も周りに迷惑をかけて、「このままでは一人ぼっちになってしまう」と怖くなったからです。アルバイトの子たちにも嫌われ、実際に辞めていった子もいました。会社の同僚の中にも、何も言わずに距離を置く人が多くいて、後から「あそこの店にはヘルプに行きたくない」と話していたと耳にすることもありました。
なかでも、一番大きなきっかけは、当時交際していた夫の“シゲオ”に嫌われたくないという思いでした。
――旦那さんとは、いつ頃からお付き合いしていたのですか?
エクボ:私が毎日お酒を飲むようになって数か月後に出会い、付き合い始めました。夫はお酒を飲まないのですが、付き合っている途中で私の異常な飲み方はバレていました。それでも見捨てずにいてくれて、結婚を前提に同棲していました。
一度、同棲を始める前に、泥酔状態で夫に会いに行ってしまい、「酔っているなら帰って」と叱られたことがありました。お酒のことで怒られたのは初めてだったので驚きました。夫は後から、「怒ってごめんね」と連絡をくれて、「こんなに優しい人をこれ以上傷つけたくない」と感じるようになったんです。
「このままではシゲオも、仲の良い友達も、家族からも嫌われる」と考えて眠れなくなり、「もうお酒を止めるしかない」と覚悟しました。そして、どうすればいいかを真剣に考え始めました。