「そんなある日、義実家に行くといつものように義父の思い出語りが止まらなくて。私がやれやれといった感じで黙って聞いていると、義父がチラリとこちらに視線を向け、私を指さしてこう言い放ったんですよ『今日も仏頂面で可愛くないねぇ』と」
その瞬間、我慢の限界がきて血が沸騰するような怒りが込み上げたそう。
「はぁ? なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ! と心の中で叫びながら……もうどうしようもできませんでしたね」
葉子さんはゆっくり顔を上げ、静かに、でも確実に届く声で「はい。だって全く知らない話ばかりですし、質問しても無視されて……正直、本当につまらないです。では、お先に失礼しますね」と気がつくと本心を伝えていました。
「部屋の空気が凍りつくのを背中に感じながら、私はそっと立ち上がり、そのまま義実家を後にしたんですよね」

※画像はイメージです
玄関を抜けた瞬間、冬の冷たい空気がふわっと頬を撫でたそう。
「寒いはずなのに、驚くほど気持ちよくて。久しぶりに肺の奥まで息が吸えた感じがしましたし、あぁ……やっと自分を取り戻せたって思えたんですよ」
帰宅すると、慌てた様子の夫が必死に謝ってきました。
「私が帰った後、義父は『最近の若いモンは失礼だ』とプリプリ文句を言っていたらしいのですが、夫は『そんなの気にしなくていいから』と言ってくれて嬉しかったですね」
そして後日、義母から個別に電話があったそう。
「『ごめんなさい……あなたの気持ち、分かっていたのに何も言えなくて』と涙声でした。義母は心優しい人なのですが、義父の前ではどうしても強く出られないんですよ」
その後、義母は精一杯の思いやりで「これからは、無理して来なくていいからね」と続けました。
「その言葉のお陰で、私の心は一気に軽くなって……本当の気持ちを伝える勇気も時には必要だなと思った瞬間でしたね」と微笑む葉子さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop