――声かけの内容も重要なんですね。
山田:おむつを替えたときに「臭いね」「汚かったね」と伝えるよりも、「スッキリしたね」「気持ちよくなったね」といった、体に対してポジティブな言葉をかけてみる、という考え方があります。これはおむつ替えに限らず、子どもと接する場面全般で、「汚い」「恥ずかしい」「ダメ」といった言葉が、どんなメッセージとして伝わるかを少し立ち止まって考えてみるきっかけにもなると思います。
――日常生活の中で、どのように気をつけたらいいのでしょうか?
山田:例えば1〜2歳の子が、お風呂上がりに裸で走り回っていつまでも服を着ないとき、「恥ずかしいから早く着なさい」と言うこともありますよね。ただ、その言葉が、結果として「あなたの体は恥ずかしいものなんだ」という受け取り方につながる可能性もあるんですね。
体や生理現象について、ネガティブに受け取られかねない言葉が重なると、子ども自身が「自分の体は恥ずかしいものなのかもしれない」と感じてしまうこともあります。
だから私は、0歳からの包括的性教育は、「どんな言葉が子どもにとって安心や肯定につながるだろうかと考え続けること」だと思っています。そうしたポジティブな声かけの積み重ねが、「あなたの体は大切なものだよ」というメッセージとして伝わっていくのではないでしょうか。
――「汚い」「恥ずかしい」は、日々の子育てでつい使ってしまう言葉です。
山田:すごくよくわかります。そんなときは、「なぜそうしてほしいのか」を言葉にしてみてはどうでしょうか。たとえば、お風呂上がりに裸でいる子に対して、「恥ずかしいから服を着よう」と伝える代わりに、「裸でいると風邪を引いちゃうかもしれないから、服を着ようか」と理由を添えてみる。子どもにとっても行動の意味が伝わりやすくなりますよね。
講演会では、お子さんが自分の性器を触ってしまうというご相談をよく受けますが、そんなときも「恥ずかしいからやめなさい」ではなく、「そこはあなたのすごく大事な場所だから、清潔な手で、優しく、自分だけの場所で触ろうね」と変換して伝えてみます。
「あなたの体はとっても素晴らしいもの」と伝え続ける
――言い換えるだけで、こんなにポジティブになるんですね。
山田:大好きな大人たちから「恥ずかしいよ」「汚いよ」と言われて育って、自分の体に自信や自尊心を持てるようになるかといったら、やっぱり難しいですよね。
幼少期からの包括的性教育は、決して「性について教え込むこと」ではありません。まずは「あなたの体はとっても素晴らしいものなんだよ」と伝え続けること。それが、自分を大切に生きていく上での確かな土台になります。
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性教育と聞くと、「性器や性行動をどう教えるか」というイメージが先行し、どうしてもハードルが高く感じられがちです。でも、もっと広い視点で、まずは自分の心と体を大切にすることから伝えていく。それは、日頃のちょっとした声かけを意識するだけでも十分に始められるものだとわかりました。
【山田亜弥】
看護師として医療現場を経験したのち、性教育の大切さを実感し「生」教育アドバイザーとして起業。ベビーマッサージ講師歴10年以上。2024年は60講演を実施し、乳幼児〜大人まで幅広く包括的性教育を届けている。自身もHSPで三姉妹の母。生きづらさを感じる人も「自分っていいな」と思えるような性教育=生教育を目指して活動中。
<取材・文/大夏えい>
大夏えい
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作。