――では、実際にどのように伝えていけばよいのでしょうか。前回は赤ちゃん期についてお聞きしましたので、幼少期の学びについても教えてください。
山田:2〜3歳になると言葉が発達して、自分自身の体にも強い興味を持ち始めます。そこでまずは、「ほっぺはここにあるね」「ここは首だよ」といった日常のやり取りから始めてみるのがおすすめです。例えば「あたま・かた・ひざ・ポン」のような手遊び歌や、絵本を通して体のパーツの名前や場所を一緒に確認していく。「この体は自分だけのものだ」という感覚が育まれます。
鼻や手と同じように性器もあって、どれも等しく大切な存在ですよね。「あなたの体はあなただけのもの。だから大事にしようね」っていう考え方を育むことが、性教育の土台になります。
――子どもに教えるときに、気を付けることなどはありますか?
山田:実は、子どもは性のことをなんとも思っていないよ、というのは大人の皆さんにお伝えしたいです。大人が性を「恥ずかしい」と感じるのは、性的なコンテンツを目にしたり、これまでに蓄積されてきた固定観念の影響が大きいんです。でも、幼少期の子どもたちは、そうした情報にまだ触れていません。だから、性器や性行為のことを「気持ち悪い」とも「汚い」とも思っていないんです。
4~5歳の子どもに性器のことや、「赤ちゃんはどうやってできるの?」という話をしても、大人が想像するほど特別な反応はありません。「ゾウさんの鼻はどうして長いのかな?」と疑問に思うのと同じ感覚で、「どうして女の子と男の子はおまたの形が違うんだろう?」って考える。それくらいフラットな話題として伝えていいんです。
――小学校高学年や思春期の子どもには、どのように伝えればよいのでしょうか。
山田:小学4年生くらいになると、セックスを含めたさまざまな性の情報を、子どもたちはすでに知っていることが多いです。今の時代、YouTubeやTikTokの広告など、いたるところにセックスの情報があふれています。性的なものを「見せない」「触れさせない」という対応はほぼ不可能ですよね。
セックスについてある程度知っている年齢の子どもには、「性」を三つの軸で伝えるのがいいですね。一つ目は「命を授かる性」、二つ目は「人と触れ合うための性」、そして三つ目は「同意のない触れ合いは犯罪になる」ということです。
ただ、これまで親子で何も話してこなかった場合、いきなり性の話をするのはハードルが高いですよね。さらに思春期の子どもたちは心が不安定で、親とも距離を取りたい時期ですから、いきなり性の話を持ち出されたら、「うざい」以外の何ものでもない。「いまさら?」と感じることもあるでしょう。
――どうすればいいのでしょうか……。
山田:そんな状況の親御さんに私がお伝えしているのは、「丁重に謝りながら伝える」という姿勢です。例えば、「ごめんね。本当はもっと早くに伝えるべき大事な話だった」「私自身知識がなかったり、話してはいけないものだと勘違いしていて伝えられなかった」とまずは謝る。そのうえで「でもね、大切な話だから少しだけ聞いてほしい。話してもいいかな?」と入り口を作るだけで、子どもの受け取り方は大きく変わります。
それでも難しい場合は、年齢に合った性教育の本を「よかったら読んでみてね」と渡したり、さりげなくリビングに置いておくのも一つの方法です。性のことは、子ども自身も実は気になっているテーマなので読んでくれるかもしれません。
――本を置くという方法もいいですね。
山田:たとえば、芸能人の妊娠や出産のニュースを家族で見ているときに、「学校で妊娠の仕組みについて習った?」と、聞いてみるだけでもいいんです。生理が始まったり、体が大人に近づいたりしているお子さんであれば、「赤ちゃんを授かれる体に近づいているから、そろそろ大切なことを伝えておきたいと思っているよ」と声をかける。焦らず、日常の中で少しずつ伝えていけばOK。そうやって話せる環境を少しずつ作っていってみてください。
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性教育の第一歩は、過去に性で傷ついた自分に会いに行き、認めてあげること。その上で、日頃から「何かあったときに子どもが安心して相談できる関係性」を丁寧に築いておく。これらベースが整ってこそ、生きること全般の中にある性を、ポジティブに伝えられると実感しました。
<取材・文/大夏えい>
大夏えい
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作。