過去に執着する男たちの滑稽さ…イ・ビョンホンが死んだ目で語る「資本主義への皮肉」に宇垣美里が感じたこと
元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。

そんな宇垣さんが映画『しあわせな選択』についての思いを綴ります。
●作品あらすじ:製紙会社に25年勤め、家族とともに順風満帆な生活を送っていたマンス。しかし、突然の解雇で人生は一変し、再就職も思うようにいかず、家さえ手放す危機に追い込まれる。追い詰められた彼は、「ライバルがいなくなれば仕事は得られる」という危険な発想にたどり着き、再起をかけた計画を実行に移そうとする。平凡な男が徐々に常識を逸脱していく姿を、ブラックユーモアとサスペンスで描く。
平凡な会社員の転落と「極端な決断」を描くブラックコメディを宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です)
人生はいつだって理不尽だ。すべてを手に入れたとほっと一息ついた次の瞬間に突然のリストラで仕事を失ってしまったら、誰だって途方に暮れてしまうだろう。
愛する家族を守るためにプライドを捨て、頭を下げて地面に這いつくばってでも仕事を得たいと思う気持ちは理解できる。
しかし、そのために「再就職のライバルである他の求職者たちを殺してその座を奪いとろう!」とは、ならないだろ! いったい全体どうしてそうなった!?

「仕方ない」とつぶやきながらどう贔屓目に見ても非効率極まりない道をひた走るイ・ビョンホンのどんくさく空回りしっぱなしな様が面白おかしく、いっそ切ない。
あの天下のイ・ビョンホンがこんなにダサいことがいまだかつてあっただろうか。
人はあんなにも死んだ目ができるものなのか、と感心すらしてしまった。のっぴきならない深刻な状況にもかかわらず、どこまでいっても報われない彼の小物然とした必死な様子は狂気的ながらもコミカルでどうしたって笑ってしまう。

変態的なカメラワークと執拗にモチーフを重ねる編集、トリッキーな演出などこれぞパク・チャヌク!と言いたくなるような味わいに思わずにんまり。
しかし、ラストで描かれるあれほどに手を汚した果てに迎えた冷たく孤独な結末がどうしても他人事のようには思えず、背筋がぞっとした。
彼が囚われている椅子取りゲームに、拒否権もないままに私も参加しているのだから。ああ、資本主義よ。オフビートなスラップスティックコメディはエンドロールまでブラックな皮肉たっぷり。

宇垣美里さん
人生はいつだって理不尽だけど…
かつてないダサさのイ・ビョンホン

エンドロールまでブラックな皮肉

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