
愛犬リリーと
ところがある日のこと。 19時に就寝し午前1時には起きる生活を繰り返していた中、夜10時ごろでしょうか、私にとっては一番睡眠が深い時間にGさんから着信があったのです。
普段だったら、心の中でごめんなさいと思いながら、着信には出ないでいた私でしたが、なんと完全に寝ぼけた状態で、というよりも、むしろ寝たままの状態で、意識がまったくない中で、その電話に出てしまったのです。
今となれば夢遊病なのかなんなのかわかりませんが、とにかく勝手に私は電話にでてしまい、さらに恐ろしいことに会話まで始めていたのです。
枕元にあった電話に眠ったまま手を伸ばし、通話ボタンをおし、耳に押し当てていた私。
しかし完全に夢の中。自分がいったい何をしているのか自分自身でまったく理解していない状態。電話で話しながら、徐々に自分の意識がはっきりしていくのがわかりました。
完全に寝ぼけた状態で、出るべきでない電話に出てしまったと、なんとなくわかり始めたと同時に気づいたのは、Gさんがかなり怯えた調子であるということ。
Gさんは「お前……いったい何言ってるの?」と、相変わらずのお前呼びは健在ですが、完全に恐ろしいものと対峙して戸惑っているような口調。
一方の私は、これまでどんな会話をしていたのかまったく見当もつかない中で、はいその通りです。はいその通りですね。かしこまりました。ありがとうございました。失礼いたします。と、馬鹿丁寧な受け答えをしているのです。
この受け答えとは対照的に、黙りこむGさん。
そしてそのまま電話は切られ、その後二度とGさんから電話がかかってくる事はありませんでした。まったく自分の予期せぬ形でちょっと苦手だと思っていた人を撃退してしまった私。
早朝番組生活が始まり、身体が混乱したということでしょうか……。
睡眠のリズムが狂うとこういった出来事もあるよと、この「寝たまま会話して、相手をなぜか撃退した」エピソードを、とある若手アナウンサーの子に披露しましたが、
「そうなんですね……。ただ、私は絶対そんな事はないと思います」と軽く突っぱねられてしまいました。そりゃそうだ。
ちなみに業界人と仰っていたGさん、あれからお目にかかる事もありませんでした。何者だったのか、そして私は何を口走ったことで、彼をあそこまで怖がらせたのか。真相はいまだ藪の中。
<文/アンヌ遙香>
アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『
アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram:
@aromatherapyanne