──主人公の由良は、まるで我が子のように愛犬を育てていますよね。今や子どもの数より、犬や猫の飼育頭数のほうが多い時代ですが、ペットを育てることは、「子どものかわり」にはならないのでしょうか?
紗倉:私もこの数年、犬と暮らしていますし、深い愛情を持って世話をしているので、「育てる」という点では、本質は同じなんじゃないかなと感じています。
ただ、現実問題としては、出産を経験した人たちの間には、その経験をした人しか入れない「組合」みたいなものがあるように思えるんです。出産特有の肉体的な痛みや苦しみ、そして産後の「身体の変化あるある」といった共通体験によって結ばれた、目に見えない強い連帯、みたいに、勝手に眩しく見つめているだけなんですが……。
──この本にも、産休から復帰したばかりの女性が、出産後の体型の変化を男性から揶揄される場面がありますね。見るにみかねた主人公たちが、男性をたしなめようとしたものの、体型を揶揄された当の本人は「なんせこっちは子ども産んだんだからね!」と、「ダイエットや美容を気にするような未産婦とは違う」と、いわばマウントとも感じられる切り返しをする場面は、痛烈でした。
紗倉:もちろん、こういった壁は産んだ側からだけじゃなくて、産んでいない側が過剰に作り出してしまう面もあるように思えます。
「自分たちは産んでないから」と変に意地を張ってしまったり、産む人との差をみずから自虐的に強調してしまったり。そうなると結果的により強い拒絶感や分断を生んでしまいかねませんよね。女性は、どうしてもライフステージによって、関係性が変化していくことがあると思います。それも長い人生では「仕方ない」と思う反面、なんとも言えない寂しさを感じるのも事実。
ただ年上の方からは、「いずれ子育てが落ち着けば、鮭が川に戻るようにまた元に戻るよ!」なんて話も聞いたりするので、今は疎遠になってしまっても、いつかまた関係性を再構築できる日が来ると、今は信じて待っています。
<取材・文/アケミン 撮影/星亘>