すると健人さんは足取り軽く、あるマンションに入って行きました。
「健人が慣れた手つきでオートロックの入り口に鍵を差し込んでいるのを見て、頭をバットで殴られたような衝撃が走りました。これって不倫確定フラグじゃんと心の中で歯ぎしりをしながら入り口に滑り込み、我慢できずに『おい健人! 待てー!』と叫んでしまったんですよ」
振り返った健人さんは舞花さんと目が合うと、明らかに取り乱して「うわぁぁ!」と奇声を上げながら一階のいちばん奥の部屋まで走り、慌てた様子で中に入っていったそう。
「私に謝りもせず、言い訳もせずに逃げるってどういうこと? と、すごくバカにされた気持ちになり頭にきましたね」という舞花さん。その部屋のインターフォンを何度も鳴らしました。
「ですが無視されたので、ドアを叩いて『ちょっと! 出てきなさいよ』と叫んでみたのですがノーリアクション。しばらく粘りましたが虚しい気持ちになり、いったん自宅に戻ったんですよ」
そして健人さんに電話をかけたり、何度もLINEをしてみましたが既読にもならなかったそう。
「そうこうしていたらウチのインターフォンが鳴ったのでモニターで確認してみたら、見知らぬ女性が立っていて」
「どなた様ですか?」と尋ねると女性は「先ほど、健人さんが来た部屋の住人です」と答えました。舞花さんは玄関を開けることに。

「その女性は、40代半ばぐらいだったと思います。白髪交じりの化粧っ気のない落ち着いた雰囲気で……とても不倫するようなタイプには思えませんでしたね」
その女性にいきなり「健人さんが離婚したいと言っているんですが、それでいいですか?」と言われて舞花さんは唖然としてしまったそう。
「頭の中で、『はぁ? そんな大事な話を他人に、しかも不倫相手に託すってどういうこと? そして今朝まであんなに仲良くしていたのに……あれは全部演技だったってこと? というかいつから不倫していたの?』と次から次へといろいろな思いが巡って、混乱してしまいました」