一方で、演技の世界でのんさんが大きく再注目されたのが、声優として主演を務めた映画『この世界の片隅に』です。
柔らかく素朴な語り口調で、戦時中でも健気に生きる女性の生き様をありありと描き、小規模上映から口コミによって興行収入約27億円の大ヒットを記録。同作は国内外で高い評価を受け、のんさん自身もヨコハマ映画祭審査員特別賞など数々の賞を受賞します。

画像:映画『さかなのこ』公式サイトより
綿矢りささんの小説原作の映画『私をくいとめて』では自問自答を繰り返すおひとりさま女性をコミカルに演じ、さかなクンをモデルにした『さかなのこ』では性別の垣根を越え、好きなことに目を輝かせる主人公を表情豊かに体現。両作品で日本アカデミー賞などの主演女優賞を次々と獲得していきます。
さらに主演映画『Ribbon』では脚本・監督も務め、独特の幻想的な世界観を表現。新人映画監督を対象にした新藤兼人賞最終選考にノミネートされるなど、演者としてもクリエイターとしても大きな功績を残します。
この頃には「ドラマでは見ないが、映画界で凄まじい活躍をしている」という実力派としての認知をお茶の間に浸透させていきました。同時にテレビCMにも継続的に起用されてきたことは、彼女の透明感と前を向く芯の強さに需要があり、好感度も高く維持されてきた証拠でしょう。
30歳を迎えてからは、「女優・創作あーちすと」という改名後に付けた肩書を覚悟を込めて「俳優・アーティスト」に変更。昨年の日曜劇場『キャスター』(TBS系)で、ゲストながらついに民放ドラマ復帰し、信念を貫く大学研究員役を好演しました。この頃、芸能界の風向きも大きく変わります。
公正取引委員会は、一方的に芸名の使用を制限することを問題視する指針を公表。改名から約10年で、のんさんのSNSのプロフィール欄に「のん(本名:能年玲奈)」と、能年玲奈の表記が帰ってきたのです。
彼女が活動の場を制限された20代の時間は帰って来ませんが、自身でキャリアを確実に積み重ねて大きな前進を成し遂げました。