親まで巻き込む、家を買うコトの重大さ【シングルマザー、家を買う/8章・後編】

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 そして、おじさんは続けて話す。

「この年収と条件だと、銀行は貸してくれません。でも、私たちならローンを組むことは可能です。ただ、あなたの名前だけでは無理です。お父様との親子ローンという形にさせてください」

 いや、それじゃ意味がない。

「ごめんなさい、私は両親から一切援助をもらう気はありません。だからこそ、名義だけでも迷惑をかけたくないんです」

「それだと、こちらからのローンは無理という話になります」

 この押し問答が何回も繰り返されたあと、ラガーマンは口を開いた。

「これは名義だけの問題です。吉田さんが全額払えばいいだけの話です。ただ、なにかあったときの担保がどうしても必要なんです。それは理解していただけますよね?」

「娘は一度決めたら必ずやり通す」



 すると、ずっと黙っていた父親が話しはじめた。

「うちはお金持ちではないから、娘に家を与えたり、援助してあげることは出来ないけど、名義を貸すくらい、なんてことない。それに、いざとなったら今の家を売ってこの家に引っ越すよ。今の家より一回り大きいし、住所もほとんど変わらないし。それに、可奈は一度決めたら絶対にやり通すから、問題ないよ。名義はお父さんと可奈の二人の名義にしよう」

親まで巻き込む、家を買うコトの重大さ【シングルマザー、家を買う/8章・後編】 それと、一拍置いて、こんな提案もしてくれた。

「もし、2人の名義になるのなら、お金は払えないけど、団体信用保険があるよね? 夫婦の保険をかけられているほうが死んだら、もう払わなくていいという保険。あれに入ろう。それで、名義は俺にしてくれ。俺はもう64になるし、あと30年生きているかどうかはわからない。もし、ローンの途中で俺が死んだら、その分お前たちは楽だろう? 俺にはそれくらいしかできないけど、それだけでも違うよね」

 そう笑いながら話す父親は、これまでにないくらいカッコよくて、心から感謝してもしきれなかった。

 こんなことを言ってくれた父親のためにも、私は30年、何があっても払いきらなくてはいけない。それに、30年後に、冗談で「払いきっちゃったね!」って笑うためには、父親に生きていてもらわなくちゃいけない。

 このとき、あらためて、家を買うコトの重大さに気づいたのだ。



<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。

※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。

シングルマザー、家を買う

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シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。




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