ローン会社の人に言われた、残酷なヒトコトとは…【シングルマザー、家を買う/8章・中編】

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 そして3日ほど経っただろうか。

 不動産屋から呼び出しがかかり、そこに父親も同席してほしいということになったのだ。

 私の父は、ビックリするほど娘を溺愛する典型的な父親だ。ただ、すべてのお金を母親に管理されているため、支援することは無理。それは私も承知していた。いまの父親の楽しみは、定年後のパートで貯めたお金で娘と息子を市民プールに連れて行くことなのだから。本当にいい“育じぃ”である。

「母子家庭ですけど、ちゃんと働けるんですか?」



 そんな父親と一緒に不動産屋へ向かうと、ラガーマンはこれまたビックリするほど典型的な“金貸し”っぽい顔のおじさんを横に携えて登場したのだ。このおじさん、メガネが頬に埋まっている。とても恰幅がよく、舌滑が悪い。私が一番苦手なタイプだ。

 そのおじさんは、住宅ローン専門の金融機関の人だという。ローンを抱えている35年間、同じ金利で貸し出してくれると言うのだ。そのおじさんは私にむかい、いきなりこう言った。

「フリーライターって、証明できるものはありますか?」

ローン会社の人に言われた、残酷なヒトコトとは…【シングルマザー、家を買う/8章・中編】 なんだか泣きそうになった。

 優しく聞かれてはいるけど、なんだか全否定されている気になった。

 さらに追い討ちをかけるように、おじさんはこう聞いた。

「母子家庭ですけど、ちゃんと働けるんですか?」

 ローンを組むということは、どうしてこんなに残酷なことを聞かれなくちゃいけないんだろう。

 初対面のこのおじさんに、私の生き方を全部否定された気がしたけど、そこはこらえて、こう答えた。

「今度、私が書いている文章が載った掲載雑誌を持ってきます。それに、母子家庭だからこそ、ちゃんと働くつもりです。この子達のために、何があっても働くつもりです。そのために家が必要なんです」

 ラガーマンがオロオロして私とおじさんをみていてくれたことだけが救いだった。ラガーマンまで私を試すような目で私を見ていたらもう、心が折れる。

 その横で真っ直ぐ前を見つめる父親。彼は一言も挟まない。きっと私の戦いの場所だとわかって口を挟まないのだろう。

⇒【後編】「黙っていた父親が口を開いた。カッコよかった」に続く http://joshi-spa.jp/196217

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky

※このエッセイは毎週水曜に配信予定です。

吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@knysd1980
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