親まで巻き込む、家を買うコトの重大さ【シングルマザー、家を買う/8章・後編】

⇒【中編】はコチラ http://joshi-spa.jp/196225  そして、おじさんは続けて話す。 「この年収と条件だと、銀行は貸してくれません。でも、私たちならローンを組むことは可能です。ただ、あなたの名前だけでは無理です。お父様との親子ローンという形にさせてください」  いや、それじゃ意味がない。 「ごめんなさい、私は両親から一切援助をもらう気はありません。だからこそ、名義だけでも迷惑をかけたくないんです」 「それだと、こちらからのローンは無理という話になります」  この押し問答が何回も繰り返されたあと、ラガーマンは口を開いた。 「これは名義だけの問題です。吉田さんが全額払えばいいだけの話です。ただ、なにかあったときの担保がどうしても必要なんです。それは理解していただけますよね?」

「娘は一度決めたら必ずやり通す」

 すると、ずっと黙っていた父親が話しはじめた。 「うちはお金持ちではないから、娘に家を与えたり、援助してあげることは出来ないけど、名義を貸すくらい、なんてことない。それに、いざとなったら今の家を売ってこの家に引っ越すよ。今の家より一回り大きいし、住所もほとんど変わらないし。それに、可奈は一度決めたら絶対にやり通すから、問題ないよ。名義はお父さんと可奈の二人の名義にしよう」 親まで巻き込む、家を買うコトの重大さ【シングルマザー、家を買う/8章・後編】 それと、一拍置いて、こんな提案もしてくれた。 「もし、2人の名義になるのなら、お金は払えないけど、団体信用保険があるよね? 夫婦の保険をかけられているほうが死んだら、もう払わなくていいという保険。あれに入ろう。それで、名義は俺にしてくれ。俺はもう64になるし、あと30年生きているかどうかはわからない。もし、ローンの途中で俺が死んだら、その分お前たちは楽だろう? 俺にはそれくらいしかできないけど、それだけでも違うよね」  そう笑いながら話す父親は、これまでにないくらいカッコよくて、心から感謝してもしきれなかった。  こんなことを言ってくれた父親のためにも、私は30年、何があっても払いきらなくてはいけない。それに、30年後に、冗談で「払いきっちゃったね!」って笑うためには、父親に生きていてもらわなくちゃいけない。  このとき、あらためて、家を買うコトの重大さに気づいたのだ。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。 ※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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