トヨエツの“足キス”に萌え死にする女性続出! 映画『娚の一生』【廣木隆一監督インタビュー】
「人を好きになるのはしんどい。けど、君のことを好きになってしもた」
「練習や思うて、僕と恋愛してみなさい」
「恋なので、仕方ありませんでした」
豊川悦司演じる中年男性(海江田醇)の不器用で真っ直ぐな愛情表現。そして榮倉奈々演じる恋に疲れたアラサー女性(堂薗つぐみ)へのシンパシー。さらに豊川悦司が榮倉奈々の足を舐めるという、官能……。女性たちの心を鷲づかみにした、映画『娚の一生』。
⇒【YouTube】映画『娚の一生』予告編 https://youtu.be/8HaFO_mhk0I
原作は、累計150万部セールスコミック。原作の世界観を忠実に、「海江田が豊川悦司」という神キャスティングが話題となった。ドイツの第15回日本映画祭「ニッポン・コネクション」にて、観客が選出する「ニッポン・シネマ賞 2015」を受賞。7月15日(水)待望のDVD発売を前に、廣木隆一監督に製作秘話を聞いた。
――女性から、「萌え」「キュン死」といった反応が多かったですね。
豊川さんのファンの方が多いのかなぁ? ああいう台詞を平気で言っても嫌味じゃない役者さんがいいじゃないですか。豊川さんにピッタリだなと思いました。豊川さんは大人の役者さんとしてすごくチャーミングです。
――豊川さんは普段からチャーミングなんですか?
普段からチャーミングですね。撮影現場にも、リュック背負って帽子を被ってジャージ姿で現れて、「だれ? このおっさん」みたいな(笑)。役者さんの感じではないですね。そういうギャップがいいですよね。
――榮倉奈々さんはいかがでしたか?
自然体でナチュラルな芝居なんだけど、存在感を感じさせてくれるすごい役者さんです。『余命1ヶ月の花嫁』で初めてお会いしたんですが、どんどんお芝居が上手くなっています。よりナチュラルな芝居になっていますね。榮倉さん独特のものだと思います。
――「足キス」は、どう解釈していいのかな、と。
海江田の性格やつぐみとの距離感が、一番的確に出ているところだと思います。不器用な中年の男がつい足を舐めてしまいました、という。つぐみだって足を舐められるとは思っていないから、「え! なにそれ!?」というのが、この映画の男と女のコミカルさだったり、純真さだったり。
――色気のあるシーンですが、エロスとして描かれましたか?
そうですね。すべてのことに関して、男と女はエロスがないと成立しないと思うので。エロスのない二人はおかしい、くらいに思っています(笑)。ストレートなエロスではなく、日常の空間でああいうことが行われている、というのがエロティック。田園風景だから趣があるのであって、ラブホテルでやってもね。
――実際に“足キス”をやる人は増えたのでしょうか?
どうなんでしょう(笑)。
――男性からすると、目の前に足があったらキスしたくなるものですか?
ならないです(笑)。海江田のキャラクターなら分かりますけど、普通はやらないんじゃないでしょうか。海江田は不器用なゆえに、そういう行為に出ちゃった、ということですね。
――海江田さんは不器用でしょうか? スマートな男性という印象ですが。
一見スマートなところもありますけど、基本的には不器用だと思います。「君はキレイやけど手入れしてない」とか、女性に言わないじゃないですか。考えちゃいますもん、言ったら引かれるかなとか。海江田はそういうことが分からない人ですから。
――「ニッポン・シネマ賞 2015 第2位」受賞が決まったとき、どんな心境でしたか?
「え? ほんと?」と思いました(笑)。意外でしたね。ドイツの映画祭では、結構笑いが起きました。映画を勉強している学生さんが、「日本映画独特のゆったりとした時間の流れを感じさせてくれて、映像が綺麗で気に入った」と言ってくれて嬉しかったですね。
――笑いが起きたのは意外なような……?
海江田役の豊川悦司さんと、つぐみ役の榮倉奈々さんのやり取りが日本独特の間だったりしますね。豊川さんが榮倉さんに「練習やと思うて、僕と恋愛してみなさい」のあたりとか。豊川さんの「見たがな、おっぱい」とか、すごい笑いが起きて、「お! 伝わってる!」と思いました(笑)。
――ロケーションの素晴らしさも高く評価されたようです。
山や川や田圃があるロケーションもそうですし、家の佇まいや、母屋があって離れがあって、という設定にぴったりな日本家屋が良かったのだと思います。また、カーテンが揺れるときの風の感じ方とか。日本特有の美しさが出せたのではないでしょうか。
原作のストーリーそのままに、美しい田園風景、ゆったりとした時間の流れ、人々の優しい息づかいなど、映画ならではの良さを感じることができる作品。そしてやはり、豊川悦司の萌え台詞、足キス、足キスからの……。ハアハア必至の作品である。
【STORY】
東京 で忙しくキャリアを積み、辛い恋愛をしていた女性・堂園つぐみ(榮倉奈々)は、なにもかもに疲れ、仕事を辞めて祖母が暮らす田舎の一軒家でひっそりと 暮らし始める。期せずして迎えた祖母の死をきっかけに、そこで独身の大学教授・海江田醇(豊川悦司)と出会う。生前、祖母から鍵を預かっていたと言う海江田。つぐみに好意を抱いたと、強引にその家の離れに住み込むことに。最初は歳の離れた男性の求愛に戸惑いを感じるつぐみだったが、次第に心を開いてゆく――。
自分は幸せになれないと決め込んでいた女性と、恋愛を拒み、落ち着く家庭を得ることはないと信じ込んでいた50代の男性。二人のちぐはぐな生活と、ゆっくりと“人を愛する”ということに向き合ってゆく姿を描いた大人のラブストーリー。
<取材・撮影・文/尾崎ムギ子>
足キスは、不器用な男ゆえ?

世界が絶賛した日本映画
尾崎ムギ子
1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。「web Sportiva」などでプロレスの記事を中心に執筆。著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』。Twitter:@ozaki_mugiko