夫婦ともウエディングドレス!ありえない結婚式【ダーリンは女装家vol.4】
私の旦那さんは女装家です。
私達の結婚式は、ちょっと特殊でした。新郎新婦がともにウエディングドレス! イェイ!
「ウエディングドレスを着て結婚するのって、女装家達の夢なんだ~」
と旦那さんは言いました。
なるほどね~。おもしろ好きの私が出した条件はただひとつ。
「私より高価なウエディングドレスじゃなければいいよ」
私とて女です。一応、結婚式にもウエディングドレスにも夢はありました。女装家さん達に夢があるように。
「もちろん!」
と旦那さんも快諾。
もともと旦那さんと私ではルックスのタイプが違います。
旦那さん=キレイ系。
私=タヌキ系。
旦那さんはマーメイドラインのウエディングドレスを、某オークションサイトで競り落とし、私はセミオーダー。バレエのチュチュのようなデザインにしました。洋裁和裁のプロである友人に作っていただいたのです。
「ウエディングドレスが届いた~。白い靴も買わなきゃね」
と私より嫁らしい旦那さん。しかーし! ウエディングドレスは当然女物、サイズが合うわけないじゃん。
というわけで、洋裁和裁のプロである友人(もともとは旦那さんの友人)に泣きつきました。
「直して~」
「任せて~」
かなり長かった丈を切り、その布地でウエストやら肩やらを補正していきます。
「ちょっとぉ、太ったんじゃない?」
「採寸前にハンバーガー食べただけよぅ、だからお腹が出てるのよ」
「シアワセ太りなんじゃないのぉ?」
と突っ込まれている旦那さん。
傍で見ている私の方が新郎のようだよ。でもうれしそうだな。マーメイドラインもよく似合ってる。
「ねえ、ブーケはどうする?」
と旦那さん。
「それも花屋さんにオーダーしなきゃね。ふたり分」
と友人。
「私より高価なブーケはやめてね」
と私。
やはり結婚式は女が主役と思いたいです。旦那さんは準主役ね。裏主役とでもいおうか。携帯でサクッとブーケの相場を調べると、ひとつ約1万円。
「え。そんなに高いの? 私のウエディングドレスより高いじゃん」
ビックリした拍子に、へこませていたお腹がポコッと出ちゃったよ、旦那さん。
ていうか、そのキラキラしたLサイズのウエディングドレス、いくらで競り落としたのよ。この買い物上手。ホント、変なところ女で変なところ男だよね。
「だって生花だもん、生花。高いんだよ」
「このウエディングドレスは枯れてるって感じ?」
そんなこと言ってないけどさ。
結局、旦那さんのブーケは白のカラーにリボンを巻いたシンプルなもの。私はピンクを基調とした数種類のバラをまあるくあしらった可愛らしいものになりました。
ちなみに結婚式は歌舞伎町で挙げました。
この話はまた別の機会に。
<TEXT/森美樹 イラスト/尾山奈央>
【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)を上梓
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