著者は、そもそも保育園が閉じられた「ブラックボックス」であると指摘します。中で何が起きているかが、外からは見えない。そのうえ、保育園に通う0~6歳の乳幼児は、不慮の事故にあうケースが最も多い年齢層。だから“子供をあずけて、ハイ安心”とはいかないというのですね。
その最大の問題は、保育士の質。保育園が単なる教育施設でなく、子供の生命を預かる場所であるのにもかかわらず、資格の取得にあたって、そうした指導や訓練を受けていないのだといいます。
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現場の保育士たちは、子どもが死に至る危険性も認識して、誰よりも安全に注意を払わなければいけない存在です。しかし、養成校や保育園で教わっていないので当然ですが、死亡事故を防ぐための知識や、そういう現場に立ち会ったときにどう動くべきかが、基本的にわかっていないのです。>(P24)
事故を防ぐための専門的な教育を受けていないために、子供の発するシグナルを見落としてしまう「ネグレクト」と呼ばれる虐待にもつながり得るのではないでしょうか。
著者が挙げる、重大事故の主な要因は、次の3つ。
・睡眠時の突然死
・食事中にノドに詰まらせて窒息
・プールなどで水遊びをしているときの溺死

厚生労働省調べ(平成26年1月1日~12月31日)
同書ではいくつもの事故例が挙げられていますが、そのひとつは、2011年4月7日、埼玉の認可外保育園で起きた事故。小部屋の押入れに設置されたベビーラックで昼寝をしていた1歳の女児に、他の男児が覆いかぶさり、その後亡くなったケースです。死因は胸部圧迫による急性窒息。
その際、女児を寝かしつけた園長が、押入れの戸を閉め、外からは見えない状態で放置していたというのですから驚きです。さらに、現場にはアルバイト女性が2人いたのですが、そのことを知りながら、女児の様子を確認すらしなかったといいます。
眠っておとなしくしていても、子供の様子をうかがうのは当たり前。しかし、残念ながらそれすらできていない保育園も現実にあるのですね。