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何かあると「謝罪しろ、反省しろ」と叫ぶ人たちの危険

 青少年による凶悪犯罪が起きた時、メディアはこぞって容疑者の友人や知人を取材します。すると聞こえてくるのは、「あんなにいい子がねぇ」とか「あいさつはきちんとしてくれた」とか、「友達思いで優しかった」とか。  犯した罪の大きさと逆の印象を答えるケースが、ままあります。  それを受けてメディアは、「見えない心の闇の解明が待たれます」などと言って、お茶をにごすわけです。

「いい子」を強制された子供たちは…

 けれども、そもそも「いい子」だとか「優しい」とかいった人あたりのよさを、果たして、うのみにしてよいのでしょうか。周りの人間に迷惑をかけず、いつでも平均点より少し上の好印象を与え続けるような“ソツのなさ”こそが、もしかしたら犯罪の温床となり得るのかもしれない。 『いい子に育てると犯罪者になります』(岡本茂樹 著)は、世間の常識で良しとされる価値観に疑問を呈するところから、犯罪者の更生について考えた一冊。大学での指導のかたわら、多くの受刑者を支援してきた著者がまず指摘するのは、「いい子」であることを強制させられる危うさです。  犯罪者と聞くと、家庭できちんとしたしつけを受けてこなかった人間を浮かべがちですが、実際は逆のケースが多いのだそう。 <彼らも最初は親の厳しい「しつけ(虐待?)」に従おうとします。 (中略)子どもは常に親の愛情を求めます。だから最初は親の厳しい「しつけ」に必死で従う「いい子」になります。  この段階で、生まれる深刻な問題があります。「裏表のある人間」をつくることです。親の前では厳しい「しつけ」を守る「いい子」になりますが、親がいないところで「いい子」でいることのストレスを他者にぶつけるのです。> (第1章 明るく笑う「いい子」がなぜ罪を犯すのか ※改行は女子SPA!編集部、以下同)  「いい子」でいることが、本心からではなく、強迫観念に屈する形で実現されている。 「あんなにいい子がねぇ」の紋切型には、こうした歪みが根付いているのですね。
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酒井法子の「とりあえず謝罪と反省」の危なさ
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いい子に育てると犯罪者になります

本書の著者・岡本茂樹氏は、2015年6月にお亡くなりになりました。本書の元となる原稿は、新潮新書編集部がご遺族の依頼を受けて整理した遺稿の中に残されていたものです。本文については、誤字脱字を訂正し、重複箇所を削除しましたが、基本的には岡本氏が遺された文章をそのまま収録しております。ただし、タイトル、章題、小見出しについては、編集部の責任において変更しました。

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