Aさんの話からうかがい知れるのは、正社員として働く妻との優雅な生活。共働きで子どもを育てる大変さはあるものの、夫婦で協力し合いながら家族の時間を大切にし、たまには実家に頼って夫婦二人でデートをするなど、「理想的な家族の姿だった」とアイミさんは言います。
「夫は仕事を何とか軌道に乗せようと休みなく働いていましたから、独立してからは夫婦や家族で過ごす時間がほとんどありませんでした。男のプライドなのか、実家に頼ることもかたくなに拒否するので、家事も育児も、家計さえも私ひとりで頑張っていたんです」
どうして私ばっかり……。
Aさんの話を聞くにつれ、やりどころのないみじめな気持ちがこみ上げてきたと言うアイミさん。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、夫の借金が発覚します。
今度ばかりは実家に泣きついてなんとか返済できたものの、夫婦仲はぎくしゃくしたものに。そんなある日、保育園で夫婦そろって迎えに来ているAさんと遭遇します。
「すごく幸せそうでした。でも、奥様はたいしてお綺麗な人でもなく、正直『なんで?』って思っちゃったんですよね」
優雅で幸せな妻は、本来自分があるべき姿……。なんであんな人が……。アイミさんの心の内で、何かが弾けます。
保育園で偶然顔を合わせた日を境に、Aさんの妻とも交流を持つようになったアイミさん。
「何でも話せるほど仲良くなったんですけど、はっきり言って、奥様が口にする悩みなんて私からしてみれば贅沢でしかありませんでした」
アイミさんからしてみれば十分に思えるAさんの家庭サービスに不満を漏らす妻の言葉を耳にするうち、アイミさんはあることを思いつきます。
「一緒に飲みに行った先で知り合った
男性と奥様との不倫を仕向けたんです。奥様は男慣れしていないのか、チヤホヤされただけですっかり浮かれちゃって(笑)。そこから実際に不倫するまで、たいして時間はかかりませんでしたよ」
アイミさんが思っていた以上に、不倫相手へのめり込んだというAさんの妻。「やめておいたほうがいいよ」と友人らしい助言はするものの
、なんとこっそりAさんへ密告。
「友人として二人を心配する体で話してみました。自分の妻が浮気するなんて思ってもいなかったんでしょう。Aさんはかなり取り乱していましたよ」
妻の不倫があかるみになったAさん夫妻、離婚にまでは至らなかったものの、以前ほどの仲睦まじさは感じなくなったそうです。
「べつにね、私はAさんとどうこうなりたいわけじゃないんです。ただ、
奥様が甘えたことばっかり言っているから、本当の苦労を教えてあげようと思っただけ」
となりの畑はよく見えるもの。他人を陥れたからといって、自分が幸せになれるわけではないのですが……。
<TEXT/千葉こころ PHOTO/VadimGuzhva>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】千葉こころ
自由とビールとMr.Childrenをこよなく愛するアラフィフライター&編集者。
人生後半戦も夢だけは大きく徒然滑走中