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“なりたい自分”をめざした末に、うつ状態に…新種の「燃え尽き症候群」

 働き過ぎがたたって、朝起きられなかったり、会社に行きたくなくなるといった症状を、燃え尽き症候群と呼ぶ。ここまではよく知られた話ですが、その原因を考えたことはあるでしょうか。  なぜ抜け殻になるまで働いてしまう人が生まれてしまうのでしょう?  英「エコノミスト」誌が運営するサイト「1843」に、先月、興味深い記事『Minds turned to ash』が掲載されていました。  精神分析医の筆者ジョシュ・コーエンによると、“燃え尽き(Burn out)”そのものは旧約聖書でも書かれているほど古いのですが、現代社会でのそれは、どうも事情が違うらしいのです。  コーエンが実際に診察した2人の男女の例から明らかになっていきます。

エリートが仕事中に幻覚やパニックに襲われ…

 投資銀行で週90時間も働いていたスティーブ。学業優秀だった彼は、入行間もないころから花形部署に配属され働きづめの毎日。すると、あるとき仕事中におかしな幻覚に悩まされ、そのまま魂の抜けたような状態に。  自分を呼ぶ声や、電話のベルが聞こえるとパニックを起こし、シャツは汗でびしょびしょ。ついには出社拒否にまで至ってしまったのです。 マッチ そんなスティーブは、絵にかいたようなエリート人生を歩んできたといいます。小さいころから成績はオールAの優等生。野球チームではキャプテンを任され、大学も奨学金で通い、投資銀行に就職。何ともうらやましいキャリアですが、スティーブにとっては違うのだそう。 「親が書いたシナリオ通りの役回りを演じるのに忙しくて、それが本当に自分が望んだものかどうかをきちんと吟味する時間すらなかった」。  つまり、自らの分別で意味のある決断をしたという実感を得られないまま、なんとなく就職までたどり着いてしまった。そのため、週90時間のオーバーワークも“シナリオ通りの役回りを演じる”作業の延長線上にしかない出来事になってしまったのですね。  しかし、それもとうとう限界がやってきた。こうして優等生スティーブは、“燃え尽き”てしまったのです。
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思い通りの仕事について、うつ状態になった女性も
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人間・この劇的なるもの

人間はただ生きることを欲しているのではない。現実の生活とはべつの次元に、意識の生活があるのだ。それに関らずには、いかなる人生論も幸福論もなりたたぬ。――胸に響く、人間の本質を捉えた言葉の数々。自由ということ、個性ということ、幸福ということ……悩ましい複雑な感情を、「劇的な人間存在」というキーワードで、解き明かす。「生」に迷える若き日に必携の不朽の人間論。

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