「17歳は死と背中合わせ」。湊かなえ原作『少女』で三島監督が描く少女と死の関係
湊かなえさん(『告白』『Nのために』)原作の長編ミステリー『少女』が、本田翼さん、山本美月さん主演で映画化されました。
女子高校生の由紀(本田)と敦子(山本)が抱える闇、死への思いを映し出した三島有紀子監督(『ぶどうのなみだ』『繕い裁つ人』)に、キャストの印象や、監督自身の死生観などを伺いました。
――イヤミス(読後イヤな気分になるミステリー)の女王と呼ばれる、湊さんの小説が原作です。
三島:原作の“ヨル(夜)の綱渡り”(由紀が書く小説のタイトル)というキーワードが燦然と輝いて見えました。一寸先も見えない中、一筋の光を見つけられたり見つけられなかったりを繰り返す。そこから主人公たちが何を見つけていくのかを映画で描けたら、多くの人に共感していただけるのではと感じました。
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――柱にした部分を教えてください。
三島:17歳はキラキラした年代ではなく、自分勝手で傷つきやすく、いろんな闇を抱えていて、死と背中合わせの時期だという世界を描いてみたかったのです。簡単に、「死んじゃえばいいのに」と口にしたり、自分自身も死にたいと思っていたり。
ただ友達が欲しかったり、親友がいるほうがいいとも思っていたりするんですよね。本当の友達、裏切らない友達が欲しいし、自分も友達になにかしてあげたい、と。もうひとつ柱にしたかったのが、由紀と敦子のいびつな青春映画を見せること。『少女』は、私の中で友情物語なので。
――本田さんと山本さんの印象を教えてください。
三島:本田さんには明るくかわいい子というイメージがあるそうですが、私にはいろんな感情がうごめいているのが見えたんです。何かに苛立っていたり。無理して笑わなくていい、本当に笑いたくなったら、大口を開けて笑えと話しました。そのほかは不機嫌なままでいい、と。それが由紀だから。彼女がもともと持っている要素の扉を開けさせてもらった感じです。感覚的な人だと思いましたね。理屈を考えてやるより、こちらが何かをぶつけたときの化学反応のほうがおもしろい。
山本さんは言葉で理解する人なので、細かく説明してあげて、いろいろお話しをしながらやっていったほうが、その世界に入っていけると感じました。素直なので、催眠術に近いというか、耳元でいろいろ言ってあげたときのほうが表情が生き生きしてくる。あと責任感がとても強くて、何テイクも何テイクもやりたいということもありました。貪欲な人ですね。
――稲垣さんの印象も教えてください。
三島:稲垣さんが演じた役は一番まっとうな大人で、唯一この世界で、人に対してあることができる人物なんです。終盤、そのシーンの表情を大事に撮れるかどうかが、私の中で勝負でした。それから敦子とのシーンに出てくる「ひとつの作品(由紀が書いた小説のこと)を生むということが、どれほど血反吐を吐きながらやるのかわかってあげたほうがいい」というセリフを、説得力を持って伝えられたのは、稲垣さんが舞台(『No.9 -不滅の旋律-』)でベートーヴェンをやられた後だったことが大きいのかなと感じました。あと、ナイター照明の生える顔でしたね(笑)。
17歳は死と背中合わせの時期
本田翼、山本美月、稲垣吾郎の印象
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