――それはなぜですか?
「
障がいについて学ぶことがほとんどないからです。補聴器の値段が高いことにちょっと触れる程度で、音が聞こえないというのはどんなことなのか、補聴器をつけるとどうなるのか、なくしたら何が困るのか、まったくわかりません。
車イスバスケットボールを題材にした『
リアル』や、初恋の彼が障がい者になった、という設定の『
パーフェクト・ワールド』といった、障がいと正面から向き合った作品からは私たちが知らなかった情報がたくさん得られます。それらに比べたら、『聲の形』は障がいについての作品だ、と思うと肩すかしのはずです。
ただ私は、真のバリアフリーな世界というのは、特別なことはなく、当たり前のようにそこにいろんな人がいることだと思います。友達のひとりの中に視覚障がい者がいる、家族に車いすユーザーがいる、それに関して特別な説明がない物語が登場すること。
『聲の形』はそれに向けた第一歩の作品と言えそうです」
『パーフェクトワールド』(講談社)