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最初に(笑)を使ったのは同級生のS山さんだった【こだま連載】

 私もS山さんに負けず劣らず友達がいなかったけれど、大人しく班長を引き受けて役を全うしようとする性格だったので「便利な人」として誘われることが多かった。強気な女子グループのボスとどうやって交渉したのかよく覚えていないが、私を入れるならS山さんも、などと言って口下手なりにお願いしたのだと思う。晴れて同じグループになったものの、特に旅を楽しんでいるようには見えなかったS山さんだが、作文の中では実によく笑っていた。いや、嗤(わら)っていたのか。  中学ではS山さんと別のクラスになった。彼女は男子から容姿をからかわれるようになり、さらに孤独を極めていた。彼女の唇は分厚く、かなり前方に突き出ていたので「ダックS山」という芸人みたいなあだ名で呼ばれていた。生粋のアヒル口だった。生まれる時代が少し早すぎたのだ。  中学を卒業してからは一度も会っていない。成人式にも来なかった。当然だ。こんな集落のことなんて忘れたいに決まっている。暗い過去を封印し、どこか遠い街でひっそり暮らしているのだろうと思っていた。
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S山さんは闘い続けていた
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