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帰省したら父が豹変していた。「ういのわっぱ知ってっか?」【こだま連載】

こだまの「誰も知らない思い出」 その2】 誰も知らない思い出――――――――――――――――――  自身の“愛と堕落の半生”を、ユーモアを交えて綴った『夫のちんぽが入らない』(1月18日発売)が早くも話題の主婦こだま。  彼女は閉鎖的な集落に生まれ、昔から人付き合いが苦手で友人もいない。赤面症がひどく、人とうまく話せなかったこだまはその日の出来事をノートに書いて満足するようになった。今はその延長でブログを続けている。  家族、同級生、教員時代の教え子、相部屋の患者。当連載は、こだまが、うまくいかないことだらけの中で出会った、誰も知らない人たちについての記録である。 ――――――――――――――――――

ういのわっぱ

「お父さんが痔になったので見に来てください。あと九州のカステラもある」  興味深すぎる母のメールに誘われ、父の痔を見、カステラを食べるために帰省した。  家に着くなり違和感があった。庭の片隅に大型トラクターが横付けしてあったのだ。来客だろうか。お百姓さんがトラクターに乗って遊びに来たのだろうか。まさかと思うが購入してしまったのか。その可能性がないとも言い切れない。定年退職した父は「毎日何もすることがない、スズメに餌をやるしか生きがいがない」と常々ボヤいていたのだ。トラクターに第二の人生を見出したとしてもおかしくはない。 「ちょっと、あのトラクターは何?」 「今年は雪が多いから、この辺の道路を除雪するために借りたんだけどね、ふふっ、お父さん乗れないのよ、だって振動が、ふふっ、直撃だから」  母の意味ありげな笑いで、ようやく察した。そうだ、父は痔が悪化しているのだ。振動は痔の天敵である。近所の老人を助けてやろうというボランティア精神を打ち砕いたトラクターが負の遺産として庭先に鎮座している。逆に老人たちは「なんであんな立派なトラクターがあるのに除雪してくれないんだ」と思っているだろう。気合の入った嫌がらせである。それにしても、こんなに嬉しそうに笑う母の顔を久しぶりに見た。自分以外の痔は楽しいのだ。
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「おまえ、ういのわっぱ知ってっか?」
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