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帰省したら父が豹変していた。「ういのわっぱ知ってっか?」【こだま連載】

 実家に帰ると父がコントローラーを握り締め、前のめりでテレビ画面を睨み付けていたのだ。躾や礼儀にうるさく、厳格だった父が夢中でマリオカートをやっていた。こんな光景を見る日が来るなんて思わなかった。これが、うい(Wii)の、わっぱ(輪)の正体だった。あの日、車内で伝えたかったのは「マリオカートのハンドル」だったのだ。近年で最も難しいクイズだった。
ういのわっぱを操る父

ういのわっぱを操る父/イラスト:こだま

 年を取るとこだわりが強くなる人がいる一方、今まで貫いてきたスタイルをあっさり捨ててしまう人もいる。両親は後者だった。かつての厳しさはどこへ行ったのだろう。父は飼育員に餌をねだるオットセイのように「うおっうおっうおっ」と唸りながら、わっぱを乱暴に回していた。何度やっても12人中の12位だ。  父は「ビリのお仕置きだ」と言われて幼い孫たちに囲まれ、丸めた新聞紙で容赦なくぼこぼこに叩かれていた。この日は父の誕生日であったが、そんな恩赦みたいなものは存在しないらしい。残り少ない髪の毛を引っ張られながら、老いたオットセイは嬉しそうに「うおっうおっ」と声を上げていた。 ※当連載は、同人誌『なし水』に寄稿したエッセイ、並びにブログ本『塩で揉む』に収録した文章を加筆修正したものです。 <TEXT/こだま>
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