帰省したら父が豹変していた。「ういのわっぱ知ってっか?」【こだま連載】
持病のある私は、肛門科へ通う父と日程を合わせ、同じ日に通院するようになった。腰を屈め、座薬のどっさり入った袋をぶら下げる運転手の父(無職)、陰気な顔をした中年の娘(無職)。車内に漂う悲愴感が半端ではない。昔から父とほとんど会話をしてこなかったので、二人きりというのは妙に落ち着かない。共通の話題もない。
その日の車内もしばらく沈黙が続いたが、ふと思い出したように父が訊いてきた。
「おまえ、ういのわっぱ知ってっか?」
「ういの・・・・・・わっぱ? それ何?」
「なんだ、ういのわっぱを知らんのか。ういのわっぱは、ういのわっぱよ。家にある」
「・・・・・・」
ほぼノーヒントである。難解すぎる。まるでわからないが、その語感から、キツネを捕まえる罠のようなものをぼんやりと思い浮べた。どうせろくなものではない。そう思い、追及するのはやめておいた。
ところが後日、思わぬ形で正解を知った。
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『夫のちんぽが入らない』 交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化! ![]() |